MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

【携帯は何もかも変えてしまう】~10/28柏崎・神田伯山独演会

柏崎市で、長く市民のために文化的公演を行なってきた柏崎芸術協会が解散して一年半。お世話になったお礼も兼ね、新組織の「柏崎舞台観楽会」の発足に微力ながら関わらせて頂きました。発足後初の落語会は5月の上方落語の会だったが、二葉さんが急病のため欠席となり、お客様の数はまばら。実質的なスタートになった今回の伯山独演会。幸いお客様の出足もよく、一ヶ月前にはチケット完売。
お迎えにいくと伯山先生はとてもご機嫌もよく、これでこの公演はよい公演になる・・・はずだった。

「携帯電話の電源はお切り下さい。またはサイレントマナーモードで・・・・」
開演前に、繰り返し陰マイクでお客様にお願いしたのは他でもなく、一ヶ月ほど前に関東近郊の会でまさにクライマックスの所で携帯が二度鳴ったことがあったため。
こればかりはお客様全ての耳に届かなくてはならないと、「終演間近になると、お迎えの方からの電話が鳴るようなことが以前もありましたので・・・」などとつけ加えて放送をしたのですが‥‥。残念ながら前半3席の2席目で鳴りました。

あわせて、補聴器の音も大きなボリュームで聞こえたり。この状況は、落語よりも沈黙の場面が多い講談には非常につらいものなのです。実際、伯山先生は4席のうち、トリの一席は人情噺を演じる予定だったようでしたが、急きょ笑いの多い「万両婿」に変更なさり、噺の途中で携帯ネタをうまく取り入れてお客様の爆笑を誘っていました。
このへんの変幻自在のネタ選びの巧みさが、伯山先生の真骨頂でもあるのですが、それは絶対伯山先生の本意ではないことはわかります。

「そういう会ならば笑いの多いネタを」そう判断されたのであれば、柏崎では今後、講談が本来得意とする「聴かせるネタ」を封印してしまう、そういう懸念があるのです。
410人のうちの、たった1.2人の携帯が、その日のネタの構成全てを変えてしまう・・・それほど演芸とは、デリケートなものなのだということを、今回のブログでは野暮を承知で語らせて頂きました。伯山先生にはひとりで4席、大満足の会ありがとうございました。控室にて、猪木さんの本をお渡しした時のワンショットを添えて。

「荒大名の茶の湯
「小政の生い立ち」
阿武松」~中入り~
「万両婿」 伯山