MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

【学生落語の青春が、プロになって岐阜に帰る日】~きよ彦・雛菊の会

まだ年号が平成と言っていた時代、北海道から岐阜へ乗り込んで冬の大会で2度も決勝にコマを進め、学生落語界に名をはせた一人の女子がいた。地元に就職し、このまま北の大地で過ごすんだろうなあと誰しも思っていたころ、彼女は隠密裏に弟子入りを果たす。2016年、林家彦いち師匠に入門、2021年3月二つ目昇進。高座名、林家きよ彦。

華々しい経歴はない。決勝進出も、したことはない。でも毎回、春の大会にも、夏の大会にも、彼女はいた。男子に交じっていじられていた、いつも明るく、時には仲間の躍進を喜び、涙を流した。卒業の半年も前から、就職が決まったと友人から知らされ、もう会うこともないだろうなと思っていた矢先、まさかの弟子入り。しかも入門先は、厳しいことで有名なあの師匠・・・・。2017年、古今亭菊之丞師匠に入門、2022年5月二つ目昇進。高座名、まめ菊改め古今亭雛菊。

きよ彦さんは新作、雛菊さんは古典。まだ噺家としてのスタートラインに立ったばかりの二人を応援するにあたり、どうしても譲れなかったこと。

この二人の会をやるのは、名古屋じゃなくて、思い出の岐阜で。

まだまだ未熟だと思われるかもしれません。でも、その成長を見届けるのもお客様の楽しみ。木戸銭は、その過程を楽しむための対価だと思って下さるとうれしいです。
7月24日、季節は夏。岐阜市文化センター。実行委員会主催、若手応援プロジェクト。
皆様のご来場を心より、お待ちしております。

令和4年 7月24日(日)14:00 開演
岐阜市文化センター4階和室

はなさき寄席~きよ彦・雛菊の会 
木戸銭 ¥3000 全席自由

出演 林家きよ彦 古今亭雛菊 各2席
チケット専用 09041533562   
mugeplan29@au.com


 

二つの顔を持つ男~5/14柏崎&5/15 長野 一之輔独演会~

土日と、出張公演に行ってきました。
土曜日は、柏崎。ここには昭和35年に発足した柏崎芸術協会という組織があり、平成21年よりお付き合いさせて頂いていました。しかし、平成23年東日本大震災、それに伴う柏崎刈羽原発の停止などが重なり会員数も年々減少する中、第518回となる今回(MUGE公演はそのうち14回)をもって63年に及ぶその歴史に幕を閉じることになり、最後を一之輔師匠が締める、そんなちょっとしんみりした雰囲気でした。

そんな雰囲気の中、一之輔師匠が見せたのは、地方のお客様、中でも約7割を占めるお年寄りに絶対心に残るであろう爆笑噺と人情噺をもってきて、見事にその大役を果たしました。お客様は腹を抱えて笑い、そして最後は思わず涙していました。
漫才のデニスもいい味を出していました。最後の例会、お客さまにも、協会役員の方にも、喜んでいただけたのではないでしょうか。

「やかん」与いち 「欠伸指南」一之輔~中入り~
「漫才」デニス 「子は鎹」一之輔

明けて15日の日曜は、三年ぶり、北野文芸座での独演会。
昨日とうって変わって、一之輔ファンが多数を占める長野県で最もコアなお客様。

金明竹」㐂いち 「反対俥」「普段の袴」「百川」一之輔

いつもの爆笑マクラからのスキのない三席。コロナの影響の中、待ちかねたムード満載の寄席、物販の文庫本も完売しお客様大満足のお開き。

春風亭一之輔。彼の引き出しには、あと何回分の噺のストックがあるんだろう。
売れっ子になる噺家には、それなりのモノがあるのだということを改めて見せつけられた二日間でした。



 

「究極の様式美がそこに。」~小辰を熱くする会~雑感

だんだん、お客様が増えてきた。小辰という噺家の価値が理解されてきた。
4回目を迎えたこの会で、間違いなく小辰さんは成長されたと感じています。
1回目から来ているお客様が、はっきりアンケートに書かれていることがその証拠。
そしてその小辰さんの前に立ちはだかる噺家さんはいつもそれ以上。
今回もまた、「ザ・様式美」とも呼べるような刺客がたちはだかりました。

2022.5/8 大須演芸場 小辰を熱くする会4 

「オープニングトーク
「欠伸指南」小辰  「厩火事」文菊
湯屋番」文菊   「鰻の幇間」小辰

登場から、いつもの腰を落とした足取りで文菊師匠登場。
座布団に座ってからの全ての所作に無駄がない。気取っているとか、品があるとか、そんな陳腐な言葉では形容できないほどの存在感。ともすれば嫌みに聞こえる危険もあるのに、まるで意に介さない。これぞ究極の様式美。そこから発せられる本寸法の落語がとにかく耳に心地よい。厩火事も、湯屋番もありふれた、誰しも高座にかける噺なのに、文菊師匠の手にかかると実に味わい深く聞こえます。まさに若手のホープと言っていいと思います。

この分野では、たぶん小辰さんは太刀打ちできません。というか、太刀打ちする気がないと思います。いつものように噺の幹を崩さない範囲で、内容をどんどん膨らませてゆく。トリのウナタイは、まさにその究極の形でした。

さて、辰のオトシゴ、小辰を熱くする会も次回でFINAL。
最強最大の笑点レギュラー、桂宮治師匠がやってきます。私の中ではまさに対極の対決、新日本プロレス頂上決戦っぽいイメージなのですが、宮治師匠は反則ぎりぎりの場外乱闘も得意です。小辰さんが引っ張り込まれないよう、お客様も見守って下さい。

 

「芸協に、こんな凄い噺家もいる」

「相手がワルツを踊るならワルツを、ジルバを踊るならジルバを踊れ」
これは、今は亡きプロレスAWA王者、ニック・ボックウィンクルが父親から教わったプロレスラーの理想形。観客がいて初めて成立するプロレスの極意を語ったものです。

5.1・円頓寺レピリエの夢丸独演会には、そんなニックのレスリングに匂いがしました。
この場合の「相手」とは、もちろん観客。落語家さんにとって、その日のお客様の傾向をいち早くつかみ、それに対応した笑い、ネタを出していくことが何より重要と言われています。

実は名古屋の落語の大好きなお客様には、全体的に一つの傾向があります。それは
「東京で噺家さんが演じる実験的なネタ、コアなネタ、貴重なネタを、東京に行かずとも名古屋で聞ける場」を求めることです。

基本、噺家さんは地方では鉄板ネタを持ってきたがる傾向があり、そのネタが被ることが多々あります。結果、どの噺家さんでも「井戸の茶碗」「紺屋高尾」春なら「長屋の花見」ばっかり、などになってしまうようなことがあるのです。

しかし、隠れた珍しい噺を持ちネタにすると、そもそもあまり演じられない噺→面白くない噺 というハードルがあるせいで、お蔵入りにしてしまうことが多い。
でも今回の夢丸さんには、そんな常識は通用しません。「殿様団子」「てれすこ」「山崎屋」どれもあまり演じられない噺なのに、そのどれもが面白い。しかもどの話にも夢丸師匠のキャラクターが見事に乗り移り、登場人物が明るくなっていき、そのハチャメチャぶりがたまらない、まさに夢丸ワールドが形成されていくのです。

前述のニックのたとえを当てはめるなら、敬老会に行けば爆笑ネタ、東京では実験ネタ、という普通のチョイスではなく、踊り方を変える、つまり噺の演じ方を変えるのが夢丸流なのです。

前座の頃は元気がいいだけの高座だった春夢さんが、ここまで立派になられた。
さらに、いろんな「踊り方」ができるようになった。成金だけじゃない、芸協にはこんな凄い噺家さんがいるんだ。名古屋のお客様がやっと気づいて下さった。

さあ、ここから夢丸師匠の時代が始まる、そんな気がする独演会でした。

「殿様団子」「てれすこ」「山崎屋」夢丸

 

「伝統芸能と大衆芸能」~オースのジョー11終演

18日大須、23日長野、24日大須の怒涛の公演ラッシュが終わりました。
お越し頂いたお客様にはただただ感謝いたします。ありがとうございました。

先日のブログにも書いた、「おぼろげながら見えてきたこと」とは、落語協会落語芸術協会の違いのことでした。以前から、決定的に違うのですが具体的に何が違うのかを明確に言えなくてもやもやしていたのですが、18日と24日、柳家喬太郎、入船亭扇辰、古今亭菊之丞の三人の大看板の芸を目の当たりにしてやっと、そのもやもやがはっきりした形で見えてきました。

落語の発祥と言われる徳川五代将軍綱吉の時代(元禄年間)から300年の時を経て、時代に沿うように落語はその姿を幾度も変えてきましたが、基本的に言われているのは江戸落語は座敷で行なわれてきた歴史があるということです。そしてその歴史の積み重ねの結果、何も持たない、しぐさだけで座ったまま物を表現することのできる世界で唯一の「落語」の形ができてきました。大げさに言えば、座布団の上だけで、先人から伝わった噺をその形を崩さずに観客をその世界にいざなうことができるものだけが「名人」と呼ばれるようになったということで、道具を使うとか、過度に客いじりをするとか、そのような行為は慎むべきものとして弟子に伝えられて現在に至っているということができましょう。

閑話休題
18日の喬太郎師匠と扇辰師匠。24日の菊之丞師匠に共通して感じたことは、「古典落語の幹を壊さず、味付けだけを変える工夫のうまさが突出している、ということです。
逆に師匠から習ったそのままを演じるいわゆる「本寸法」の落語家さんも多数存在しますが、幹を崩さないことはつまり、落語協会の落語家さんの中に綿々と受け継がれてきている噺家の矜持、のようなものと言えるのではないでしょうか。

それに対比して、落語芸術協会噺家さんにはその意識はそんなに感じません。
今を時めく「成金」メンバーをはじめとして、人気の若手が引っ張る形である意味斬新な企画や連動性をもたせた寄席の流れなど、今までにない形の落語が生まれつつある気がします。

一例としては、前の噺に出てきた定吉が次の噺にも出てきて、前からの笑いを再び呼び起こさせるとか、そでにいる仲間の悪口を言うとステテコ姿でその落語家さんが出てきて茶化すなど、ひとりの力量だけでなく、みんなで寄席を盛り上げよう、笑いを増幅させようと考える、いわゆる「ファンサービス」に長けている、と言っていいかもしれません。

落語協会噺家さんは、このやり方は取りません。たぶん心のどこかに「噺家は個人商売。ひとりひとりの芸こそが判断基準」という思想が根付いているのだと思います。
どちらがいいか悪いかではなく、落語協会は「様式美」を重んじ、伝統芸能としての歴史を守る、芸術協会は既成概念を取り払っていく「変革」を進める「大衆芸能」としての落語を確立する。またファンのほうも、「あくまで落語そのものをじっくり聞く」ことを望めば前者、「下げなども変えて、新しい落語の解釈を作り出すことを許容する派」は後者と、聴きに行く場を選択できる、これもまた落語の懐の広いところではないでしょうか。

そしてその両極端の協会のどちらも楽しめる寄席作り、それを名古屋でしていこうというのが当社のコンセプトです。これからもぜひ、大須演芸場ほかで繰り広げられるムゲプラワールドをぜひお楽しみください。

令和4年 4月24日(日)14:00
「オースのジョー11」 大須演芸場
「寄合酒」 まめ菊
「寝床」 菊之丞 ~中入り~
「奇術」 ダーク広和
「らくだ」菊之丞

 

 

「扇々喬々」終演。おぼろげに、感じたこと。

月曜日の夜、雨上がり。いつも二人の会に、仕事を終えて駆けつけて下さる皆様。
扇々喬々は今回も、お客様の心に深く入り込んだ四席でした。

「道灌」  辰ぢろ
「お祭り佐七」扇辰
「寝床」  喬太郎~中入り~
「普段の袴」喬太郎
「雪とん」 扇辰

ちょうど二日前に国立演芸場で行なわれた扇辰喬太郎の会でトリを務めた扇辰師匠がかけた「お祭り佐七」、ネタおろしの二日後に大須でもかけて下さいました。
私はそでで拍手をしながらも、一席目で、中入り前でもないのになぜおとといのトリネタをやるのだろう。最後に取っておかないのだろうと思っていました。

喬太郎師匠が中入り前でかけたのは「寝床」。ネタバレになるので言いませんが、長屋をくまなく回ってきて旦那に報告をする茂造。その中に喬太郎師匠独自のくすぐりを入れ、それをあとで旦那が番頭さんに繰り返す時にすべて回収していくというあの発想。
事実、その箇所ではこの日一番の爆笑が起こっていました。長年、そして数限りなく「寝床」は聞かせて頂いていますが、間違いなくその中で「一番面白かった」です。

中入り後、軽くクイツキで喬太郎師匠が「普段の袴」を演じた後、いよいよ扇辰師匠がトリで登場。「何をかけるんだろう」と思っていた私の眼の先で語り始めたネタは、「雪とん」。このネタは扇辰師匠で二度ほど聞いたことがあり、そんなに驚かなかったが、お祭り佐七の資料をもう一度スマホで調べてみて、頭をいきなり殴られたような衝撃を受けた。

勉強不足で申し訳ないのだが、ブ細工な若旦那のためにセッティングされたお見合いの席に間違って入ってしまったイケメン男子が実は前の噺に登場していたお祭り佐七、であったのだ。いや、トリネタとつなげるためにあえて最初にお祭り佐七をかけたのだ。
落語って奥が深い、そしてそれをこのクオリティーで提供できるこの二人も凄い。

そう感じた時に、おぼろげに私の脳裏に仮説が浮かんだ。それが何かということは、24日のオースのジョーが終わってから発表しようと思います。扇辰、喬太郎、菊之丞。
くしくもこの三人は落語協会噺家さん。今日浮かんだことが正しいのかどうか、日曜日の菊之丞師匠が終わってから、また書いていきたいと思います。

 

「きく麿・鯉八 に・て・る・会」4/19より一般発売。

昨年7月、兄弟?そろっての大須公演から一年。今年もやりますきく麿鯉八二人会。
芸協から昨年と違う写真データをいただき、並べてみたら昨年よりさらに似ているというこのお二人は、もちろん実の兄弟ではないですが同じ新作派として落語協会落語芸術協会それぞれで、たいへん重要なポジションを占めています。
ただ傾向としてはきく麿師匠は大衆にわかりやすい方向へ、鯉八師匠はマニアックな要素が強う新作と、違う芸風であることがこの二人会を興味深くしている感じがします。

MUGEプランニングはひとつひとつの公演、特に二人会においては必ずお互いの力量がクロスし、笑いのパワーが増幅するような組み合わせを心がけています。
この二人の会も、その要素がかなり大きい会として認識していますし、そこに当オフィスの存在意義があるのかなと感じているのです。

協会を超えた新作派の競演、どうぞお越し下さい。
4/19一般発売となります。

令和4年 7月17日(日)PM2:00開演(1:30開場)
「きく麿・鯉八 に・て・る・会」大須演芸場
出演 林家きく麿 瀧川鯉八 各2席 ほか
木戸銭 1階¥3,700 2階¥3,300(前売・当日共)
チケット専用 09041533562(受付 10:00~20:00)
 mugeplan29@au.com  (24時間対応)

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