MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

「柳家小せんを師匠に持つ男」~柳家あお馬独演会

プロ野球が好きです。華やかなホームランが飛び交う試合、派手な試合がある一方、堅実な守備や送りバントが勝敗を決めることも少なくありません。そんな試合には、必ず「いぶし銀」の活躍があります。

落語界にも、マスコミ露出の多い噺家さんがいる一方で「いぶし銀」的な実力者もいます。その人がいるだけで寄席がしまるとか、雰囲気がふわっとするとか、そんな存在の方、私は落語協会では「柳家小せん」師匠をあげたいと思っています。

閑話休題。小せん師匠がどんな方かを詳しく説明することが本題ではなく、そこに今から7年前、惣領弟子として入門した若者がいました。聞けば入門後も余裕をもって芸に邁進すべくバイト生活である程度の貯金をし、落語のことだけを考えられるようにしてから入門したそうで、そんな彼が師匠に選んだのが先ほど紹介した小せん師匠でした、
そこをまず、書きたかったのです。

「ピンと来て」「ひらめいて」「いきがかり上」「勢いで」入門してしまった若手を何人も知っていますが、彼は全くそれとは正反対。「自分を磨く」ことを第一に、とにかく地道に階段を昇っていくそのために、芸の幅が広くしっかりとした小せん師匠を選ぶなんざなんとも小癪な前座。さらにオースのジョーや松喬喬太郎小せんの会でしっかりした前座ぶりを見せつけられ、二つ目になったら勉強会を、と思い二年前の夏から岐阜で始めました。

1回目 「黄金の大黒」「恋根問」「三方一両損
2回目 「祇園祭」「錦の袈裟」「ねずみ穴」
3回目 「新聞記事」「お菊の皿」「お神酒徳利」
4回目 「欠伸指南」「不動坊」「夢屋」「犬の目」

案の定、その実力については折り紙付き。前回に至っては4席。他に誰も出ないたったひとりの会の二時間全てを、お客様を飽きさせることなくこなして見せました。

そして今回は第5回。岐阜の会場から名古屋の会場に所を変え、皆様に実力者あお馬を見せつけます。この日は他にも会があったらしく若手の会には逆風ですが、そこはMUGEプランニングにお越し頂くお客様になんとか来て頂きたく、伏してお願いを申し上げる次第でございます。

令和3年 6月20日(日)14:00 名古屋・円頓寺レピリエ
「あお馬の恩返しⅤ」~柳家あお馬独演会~
全席自由 ¥2500 (前売・当日共)
チケット専用 09041533562 mugeplan29@au.com

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一気の押し龍玉、変化技の小辰~6/13 辰のオトシゴ雑感

結果的に、この日になってよかったのかも知れません。

17:30から行われた辰のオトシゴは、4.25からの延期公演。
実は延期の理由がコロナではなく小辰さんのダブルブッキングであったということは、ともすればご本人の士気をそいでしまうのではないかと心配していました。
確かに日程の移動や払い戻しの手間などで大変だったのは事実ですが、もともと小辰さんの真打昇進のステップにしてほしかったこの会である以上、主役の小辰さんのモチベーションが下がるのは一番困ること。最後までそれを心配していましたが…それは杞憂でした。

ミスはミス。開口一番で登場の小辰さんはこのミスについて謝罪をした後そのもう一つの仕事がコロナで中止になったことを明かし、結局家でビールを飲んでいた・・・などと自虐しながらその自宅での顛末を笑いに変えて見事にお客様をつかんでいました。

でもそこまでは、私には起こりうることとして想定の範囲内
ところがその安心感は、次の龍玉師匠の「お直し」で吹っ飛んでしまいました。
ゲストであってゲストにあらず・・・当初から龍玉師匠に、高い壁であってほしいとお願いしていたそのさらに上の存在感を、龍玉師匠は高座で示してくださいました。
座布団返しでソデに待機していた源太くんが、「上方にはこんなタイプの方、おりませんっ」と目をまん丸くしながら驚いていた通り、一言一句おろそかにせず迫力十分に言葉を紡いでいくその存在感に圧倒されっぱなし。中入りが終わった後、これに小辰さんはどう対処するんだろうといささか心配になりました。

自分で企画しておいて心配するというのもおかしな話ですが、それほど今回の刺客は小辰さんにとって手ごわい・・・そう感じてしまったのです。

中入り後は、今度は龍玉さんは軽い噺でさっとおりました。でも、重厚な噺の後にぞろぞろ、の軽妙さを見せつけられる、その懐の深さにお客様も舌を巻いている、そんな感じが客席から伝わってきます。先場所終わった夏場所ではないですが、相撲でいえば龍玉師匠が強烈なぶちかましの後に得意の上手をむんずとつかみ、一気に土俵際までもっていく、そんな展開の中で、トリで登場の小辰さんは何をかけるのか。

どうする、どうする、入船亭小辰。
そこで彼が出した演目は、なんと「青菜」でした。

寄席でも頻繁に出る演目。誰がやってもそこそこに笑いが取れる噺。でも人によって、その形がずいぶん変わる、いわば個性で持っていきやすい、突進をかわしまくる噺を持ってきました。中入りが終わった時点で青菜を決めていたということだったので、今日の龍玉師匠の一気の押しに対処するにはこの方法しかないと、小辰さんが腹をくくった、私にはそう見えました。

土俵際、徳俵に詰まった後の、いなし、引き落とし、はたきこみ、出し投げ、腕ひねり、うっちゃり、ありとあらゆる変化技を駆使し、なかなか土俵を割らない小辰さん。
終わってみればお客様は、その健闘に惜しみなく拍手を送り、公演は終わりました。

手を抜かず、怒涛の寄りの龍玉師匠に、飛び道具を駆使して対抗した小辰さん。
凄い戦いを見ることができて、感謝感謝の一日。次回9/19は、最初から猫だましでもなんでも使ってくる技巧派の馬るこ師匠です。今度は入船亭お家芸の本寸法、王道の落語で迎え撃つのか、今からそんな妄想を抱いてわくわくしている私がいました。

初天神」小辰  「お直し」龍玉
「ぞろぞろ」龍玉 「青菜」小辰

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昭和の演芸場に、昭和の匂い~6/13 一朝鯉昇雑感

落語界が大きく動いた年と言えば、昭和53年の落語協会分裂騒動。
そこから圓楽一門が派生し、さらに真打昇進試験が導入され、その不明瞭さから立川談志師匠が脱退、立川流が生まれる。そんな激動の中、一朝師匠は落語協会の二つ目時代を過ごしていました。真打昇進も弟弟子の小朝師匠に抜かれ、ご自分の昇進の披露目の最中に師匠柳朝が脳梗塞で倒れるなど、波乱万丈の時期を過ごしながら終始一貫江戸前の本寸法の落語を追求し続け、今は11人の弟子、4人の孫弟子を抱えています。

一方の鯉昇師匠も奇人変人と揶揄された初めの師匠、8代目小柳枝師匠に翻弄され続け、野宿の体験など激動の前座時代を過ごし、師匠の芸術協会除名後に柳昇師匠に拾われる形で協会復帰、以後自分の個性を磨き続けて昭和58年、NHK新人落語コンクールで優勝、所属の落語芸術協会が翌年の昭和59年限りで上野鈴本演芸場と絶縁するなどの激動の中、独特の間と特徴のある風貌で存在感を増し、今は瀧川一門の総帥として弟子13人、孫弟子2人を抱えています。

そんな昭和を駆け抜けてきた二人の落語には、お互いの芸風に全く干渉しない、それぞれの世界を見ました。あくまで噺の面白さに重きを置く一朝流と、マクラの面白さを際立たせ、そのまま噺に鯉昇ワールドを持ち込む鯉昇流の、混じりあわない心地よさ、そんな不思議な空間が大須演芸場を支配していました。昭和の匂いを漂わせた大須演芸場に、昭和の匂いの二人の噺家、この日はとても、幸せな公演を打つことができました。

真田小僧」源太
ちりとてちん」鯉昇
井戸の茶碗」一朝
「蛙茶番」一朝
船徳」鯉昇

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地方からの、逆襲~6/12らくご源獅人雑感

名古屋駅から東へ1km、高速道路沿いの一区画に位置する昔ながらの古民家。
そこを改造した小さな演劇スペース「円頓寺レピリエ」は、これからの落語界の中心に立とうという若者が日夜しのぎを削り、その情熱に触発された若年層のファンが詰めかける注目スポット。土曜日、そこでは二人の若者が自分の個性をぶつけ合い、闘っていました。

ひとりは上方の注目株 桂源太。学生時代全国規模のタイトルをわずか入部二年目でかっさらい、プロになってからも上方らくご男子という落語家ユニットのセンターに抜擢されているいわばエリート。この日も落語ファンならいやというほど聞いてきた「延陽伯」(たらちね)と「転失気」という前座ネタを彼なりにアレンジし、爆笑をさらっていました。

一方、鉄道マンからなんと名古屋の雷門改め登龍亭獅篭さんのもとに弟子入りし、前座仲間の全く存在しない中で研鑽を積み、独自の視点の改作落語で源太を迎え撃ったのは登龍亭獅鉃。彼は学生時代は落研でありながらタイトルとは無縁、演劇の世界のエキスを吸いながらのし上がってきたいわば雑草。「蚊の~姉妹」「道クィーン」という新作と改作のいままでと全く違う形の落語が彼の口から生まれ出る。

たかが若手と侮るなかれ。

この日の高座を見て聴いた方々の満足度は、今江戸と上方の若手を聞いて味わう満足度以上のものだったと現場で確信するほどのクオリティー、ゲストとして参加した江戸の真打さんも舌を巻いていました。

東海の落語の灯は消えない。そう確信した、名古屋下克上の日でした。

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【文治・小痴楽二人会 6/13大須演芸場で先行販売です】

落語に長くかかわっていると、いろんな人間模様に出くわします。
昭和末期からの出来事として有名なところでは落語協会脱退騒動、上野と芸協の決別、などなどがあげられますが、そのほかにも協会を移籍した人、急に廃業した人、ベテランになってから突然改名する人、表に出てくるまでにいろんな人間模様があったのだと思います。

そんな中、一度師弟になってその後別れたこのお二人は、その後それぞれ、同じ協会で大きくなっていきました。師匠のほうは江戸と上方を合わせて100人を優に超える桂一門の宗家の名を継ぎ、当代で11代目という長い歴史の継承者、それに恥じない爆笑王で、協会の理事としての責務を立派に果たす、いわゆる大看板。

弟子のほうは亡くなった父の弟弟子の下に入門し直しそこから一念発起、江戸前の気風のいい芸風でぐんぐん頭角を現し、芸協躍進のきっかけとなったユニット「成金」のリーダーとして仲間の信頼も勝ち取り、満を持して単独で真打に昇進、若手落語家の先頭を突っ走っています。

そんな二人は今、とても仲良し。時には厳しかった昔を引き合いに出して師匠をいじったり、それをにこにこ笑って受け流す師匠の度量もとても素敵。去年初めて組み合わせた二人会は、大盛況のうちに終わりました。

そして今年。去年の熱気をそのままに、素晴らしい高座を我々に見せて下さると思います。どうぞ皆様、名古屋、大須演芸場で真夏の思い出を作ってください。元師弟の二人が皆様のお越しをお待ちいたしております。

令和3年 8月29日(日)14:00開演 (13:30開場)
「文治・小痴楽二人会」 名古屋・大須演芸場
出演 桂文治 柳亭小痴楽 (各2席) 桂空治
チケット専用 mugeplan29@au.com   09041533562
チケット 6/13 会場販売  
一般発売 6/14(月)0:00より(メール)
          10:00より (電話)

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「ヤバすぎ新作4」は、江戸から伝説の新作派、古今亭今輔師匠登場。

「ここのところ、ムゲプラさんは上方の文鹿師匠を推していますね!」
そんな声をお客様からお聞きします。東西に新作派と呼ばれる方は大勢いますが、文鹿師匠の新作にはパワーが満ち溢れていて、今までの上方の噺家さんにはあまり感じなかった硬派の匂いがプンプンしているのです。そういう意味では相方の新作派が同じようにパワフルだとお客様がくたびれてしまうということから、ふわふわした脱力系の方を中心にお願いしてきました。

今回は、その感じとはちょっと違う、雑学に長けた伝説の新作派、今輔師匠です。
何度かお呼びしていますが、とにかく上方新作派の方が口をそろえてその力量を絶賛するほどの方でありながら、SNSなどもあまりやらず若者の前にあまり露出を好まないという性格ゆえ、「伝説」の男となっています。彼の新作づくりの基本は雑学知識の豊富さ、そこから生み出さネル歴史ものやクイズもの、などが絶品、当人がアタック25やミリオネアに出場経験を持つ筋金入りのクイズファイターだという経歴もまた、お客様が興味をそそられる要因だと考えます。

オリンピックが行なわれていれば会期中の会となりますが、暑い日が続くと思われますので冷房の効いた部屋で、古典とは違う不思議な世界へ足を運んで見てはいかがでしょう。名古屋からもJRでたった19分、イスの用意も完璧な会場で、高いグレードの新作を楽しんでください。

令和3年 8月8日(日)14:00 岐阜市文化センター和室
ヤバすぎ新作4 出演 古今亭今輔(江戸)桂文鹿(上方) 各2席
全席自由 ¥3,300 イス完備
チケット mugeplan29@au.com  09041533562

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【柳家あお馬の硬派な魅力】

いよいよ今月、6/20に迫ってきた名古屋・円頓寺柳家あお馬独演会。
今回は数えて5回目、初めて岐阜から離れ、名古屋での開催となります。
名古屋唯一の前座だった(過去形)登龍亭獅鉄さんのホームである円頓寺レピリエで開催することで、若手の登竜門的なコンセプトをはっきりさせようという狙いだったのですが、岐阜の施設が蔓延防止措置の為閉館したので結果オーライでした。
とはいえ当日は東海地区各地で落語会が多く、ビッグネームの陰に隠れたこと+緊急事態宣言もあって今までで一番厳しい公演となりそうです。
もう開催日まで何日もないのですが、あお馬くんを知らない人のために少し、私が感じていることを述べます。

まず、コロナ禍で高座数が少ないためどうしても落語家さんの噺のクオリティーが下がりがちな昨今、彼は余った時間を稽古に費やし、なおかつ体作りに費やしています。
これは、わかりやすく言えばほかの落語家さんに流されることなく、自分の今やるべきことをコツコツ積み上げていく能力が高いということです。

それと、今はSNSの発達がすごいのでユニットを組んだり、思いもよらぬ場所で落語をやったりという派手な活動をネットで公開している二つ目さんが多いですが、そういうものには目もくれず協会の兄弟子との二人会を行ない、どんどん噺を向上させていく方法をとっています。だから一般の落語ファンには届かないかもしれませんが、何年、何十年先を見据えた戦略だと考えます。やはり、硬派です・・・。

今、あお馬さんを見ておくことで、若手の成長を楽しむことができます。
私は彼が真打になるまで、その成長を見届けようと思います。

令和3年 6月20日(日)14:00開演
名古屋・円頓寺レピリエ 「柳家あお馬独演会」
木戸銭 ¥2,500 (前売 当日共)
柳家あお馬 3席予定 

チケット専用 mugeplan29@au.com

                          09041533562 

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