MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

「しっかり姉さんとやんちゃな弟」~9/3いちか&松麻呂独演会~

この日は、13:00田辺いちか、16:00神田松麻呂、近頃気になる講談界の若手二人の独演会でした。寄席の流れを重要視する落語と違い、講談はあくまで個人がたっぷり演じるほうが聴きごたえがある、との信念に基づき、独演会二本にしましたがこれが当たり、2回ともたくさんのお客様に聴いていただきました。

山内一豊と千代」いちか
英國密航」いちか
「生か死か」いちか

「荒木又右衛門~奉書試合」松麻呂
「鯉の久三」松麻呂
「男の花道」松麻呂

合計6席、約4時間を聞き終えて感じたこと。
同じ講談なのにこんなに違うものなのか・・・。ということ。
それは、女流講談と男性の違いなのか?
それもあるだろうけれど、もっともっと根本的なもの。
田辺と神田の芸風の違い??それもあるだろうけど、やっぱり他の理由。
それはあくまでも、二人のキャラクターの違い。

いちかさんは、声を必要以上にお客様に広げません。
伝えたいことの約半分は、言葉に出す直前にその表情で伝えてしまう。
だから最低限、それを補足できればいい。だからその声を出し終えてすぐに、次の展開に移ることができる。それは彼女が持って生まれたものなのか、演劇畑で育ってきた経験がそうさせるのかわからないが、とにかく怒り、悲しみ、微笑み、驚き、すべて自由自在にその顔でお客様を引き付けていく。男女の違いはあれど、そこに大師匠にあたる一鶴先生を感じたから、やっぱり田辺派の歴史がそうさせるのか。
時間も90分ですんなり。「若手では力量、抜きんでているね」
お客様のその一言に、伯山先生が推す理由が理解できた気がしました。

松麻呂さんは、いちかさんと真反対。
物語の山場では、腹の底からあらん限りの声を出す。
そこかしこに松鯉先生の匂いを振りまきながら、硬派に、骨太に登場人物を演じる。
ただ、まだたぶん女性の演じ方は不得手なのだろうなあと感じるところもあって、粗削り感もある。だが、二つ目になってまだ1年。限りない伸びしろを持っているのが松麻呂さんだと思います。

野球に例えるなら、いちかさんはベテランの変化球投手。
早いカウントから変化球を多投し内野ゴロ、ポップフライの山を築くので、最終的な球数はぐっと少なくて済む。
松麻呂さんは、剛速球投手だがややコントロールに難あり。しかし、三振を取る個数は圧倒的にいちかさんより多い。

写真は、公演と公演の合間、いちかさんの会が終わってちょうど松麻呂さん登場。
「この間は~でありがとうございました~」
「あの会の後もお世話になりました~」
なごやかな会話を聞いていると、しっかり者のお姉さんにやんちゃな弟が絡んでいるみたいで、とても心が和んだ、9月のレピリエでありました。