MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

桂米紫噺家生活30周年記念公演~二刀流~

桂米紫噺家生活30周年の会を大須演芸場でやろうと決めたのは、1年前の3月でした。
桂米紫という、上方の落語家さんの中でかなり上位のクオリティーを持ちながら、また積極的にいろんな場所に出向きながら、その割に名古屋をはじめとした東海地方に知名度が浸透していない噺家さんの現状を踏まえた時、MUGEプランニングができる事は何なのかを問うて、出した結論が今年4/21の大須演芸場昼夜公演でした。

企画を出した時に意見が一致したのは、「今まで米紫師匠が行なった独演会では絶対企画をしないだろう人選」。名古屋で新しい自分を出してきたいという師匠の意思を汲み取り、それでは古典の他に、米紫師匠が今まであまり取り掛かってこなかった新作の公演もやっての二刀流という、師匠には大変ハードな会の中身となりました。

決定してから1年、思うように盛り上がらない感触に焦り始めていたころ、同じ日、同じ時間に伏見で宮治師匠が出演する会があると聞き、今さらながらに江戸の噺家さんに比べて上方の噺家さんが認知されていない事実を思い知り、ただひたすらじたばたしていた会の半月前、見かねた連れ合いが私に一言だけ言った言葉。

上方落語を名古屋に広めたいと言ったのはあなた。
これくらいの試練は予想できたんじゃないの?」

おっしゃる通り、その通り。
今回何人の方が演芸場にお越し下さるかはわからないけれど、その方が上方落語を好きになってくれればそこから倍々ゲームとなる。そして何年か先に実を結べば、それこそ夢が現実になる。そう思ったら一気に気が楽になりました。

手っ取り早く言うなら、どうにでもなれとケツをまくったあの日から、お客様の数は倍以上の伸びを見せたのでした。

新作の米紫
「オープニングトーク
「マニュアル通りにデートしてみた結果www」米紫
「名探偵コニン」美馬
「二人狐」米紫   中入
「令和が島にやってきた」きよ彦
「落語の迷宮/岬にて」米紫     糸 岡野鏡

古典の米紫
「オープニングトーク
「親子酒(改)きよ彦
「堺飛脚」米紫
長屋の花見」鯉昇~ 中入~
粗忽の釘」鯉昇
「柳田格之進」米紫   糸 岡野

柳田が最後の力を振り絞って刀を振り下ろしたあの瞬間、米紫さんの実力がお客様に深く認識された、そんな気配を舞台袖で感じました。昼夜合わせて6席、しかも最後は50分の熱演。打ち上げで私の目の前には、精も根も尽き果て米紫師匠が座っていました。

私は弱気になった自分を恥じ、「申し訳ございません、そしてお疲れさまでした」と心の中でお詫びをしました。上方落語の逆襲はまだ始まったばかり。一歩一歩、信者を増やす作業はまだまだ続くけれど、今回来て頂いた昼夜合計160人のお客様の心には、しっかりと「桂米紫」が刻まれたことでしょう。
実はそれが一番の収穫だったんだ、私はそう思っています。
ご来場、本当にありがとうございました!