MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

【碓氷峠の思い出】~3/24鉄道落語会雑感~

田舎は、長野県。それも国鉄の駅ではなく。長野電鉄の終着駅。
湯治に来るのはいいかもしれないけれど、その頃の東京なんて夢のまた夢。
そんな僻地に住んでいたのに、わずか13歳で東京に行く羽目に。
今では考えられない環境の寮で、中学高校を過ごした。

一年に三回、帰省する。夏休みと、冬休みと、春休み。
その時には長野電鉄国鉄が乗り入れをしていた急行が一本だけあったから、それに何度も乗った。東京から、横川へ、標高差があるため機関車を連結する。その時間を利用し、乗客が我先にと「峠の釜めし」を買うのを見ていた。

横川の駅では、3両に一人ぐらい売り子さんがいて、そこに並んで釜めしを買うのだが、私は一度もそこに並んだことがない。釜めしそのものがあまり好きではなかったこともあるが、みんなが釜めしを買うそのホームの端で暇そうにしている売り子さんのもとに行き、「鳥もも弁当」を買う。自分の所に来る中学生にいつも嬉しそうに弁当を差し出す売り子さんの笑顔が見たくて、買っていたような気もする。

その碓氷峠が落語になっていることは前から知っていた。
でもなかなか聞く機会がなかったから、去年初めてお仕事をさせて頂いた小ゑん師匠に思い切って頼んでみた。「恨みの碓井峠」来年やって下さいませんか、と。

「あの噺、マニアックだけれど大丈夫?」
「大丈夫です。名古屋のファンはそのへん、問題ないです」

そう約束して頂いてから1年後。とうとうその日がやってきた。
私は全ての用事を片付けて、舞台裏の定位置でフルバージョンを堪能した。

「フリートーク&フォトグラフィー」
「酔い鉄」梅團治 ~中入り~
「1時間59分」獅鉄
「恨みの碓井峠」小ゑん

岐阜に移り住んで約18年。もう実家はなくなってしまったけれど、小ゑん師匠の高座から、あの時代の匂いが漂ってくる。

落語っていいなあ。素敵だなあ。
この仕事、やってよかったなあ。

還暦を迎えてなお、45年前のことを懐かしむことができた一日でした。