二週間前、私のブッキングした柏崎の公演で携帯が鳴り、伯山先生のネタを変えさせてしまった反省を踏まえ、入場口にプラカード、お声がけ、そして開演直前に舞台上に顔を出しての訴えまで行なった高山の独演会。「問わず語りの神田伯山」でも取り上げられてしまったこともあり当日の私は伯山先生のお迎えを前にかなりピリピリしていました。案に相違して長旅の疲れも見せず先生のご機嫌もよいようで一安心。さっそく事前に用意周到に段取りを済ませておいたレストランにご案内しました。
「前回の柏崎の食事も美味しかったです。今朝もMUGEプランニングさんの食べ物に対する嗅覚を信用して、朝から何も食べずに来ました。よろしくお願いします」
考えてみれば旅から旅、地元の料理を出して下さる場所も中にはあるけれど、ホール落語の控室に届けられる食事の約8割は冷たくなったお弁当。中身も決まりきったものばかり。その改善をすることで伯山先生の高座が一段とよいものになるのであれば早速実行に移す、それがMUGEプランニングの誠意。そんなこんなで会場に入ると、今度は高座の照明で伯山先生との綿密な打ち合わせ。「だいたいでいい」「適当でいい」といくらでもお茶を濁せるのに、よりよい高座を務めたいという伯山先生の気合がこちらまでびりびり伝わってくる。あとは携帯が鳴らないことを祈るだけ…。運命の公演は。15時にその幕が開きました。
寛政力士伝「雷電の初土俵」青之丞➡リレー
寛政力士伝「小田原遺恨相撲」伯山➡リレー
「荒大名の茶の湯」伯山
「徂徠豆腐」伯山 中入り
「浜野矩随」伯山
伯山先生だけで4席。終演時間も30分延長。その気合が伝わる2時間半。
そして、「携帯が鳴らない」前提で始めた浜野矩随は、仏様を一心不乱に彫る間もそのあとも、携帯が鳴ることはありませんでした。
今度高山にいらっしゃるのは二年後。一段と成長した伯山先生と、一段と成長した高山のお客様の素晴らしい公演が、いまから楽しみです。