MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

名古屋で上方落語を盛り上げたい想い

改めまして新年あけましておめでとうございます。
今年1年、またよろしくお願い致します。

ここのところ、上方落語の面白さを最認識しています。
上方落語は関西弁です。この関西弁について、プロの方がわずかな言葉のイントネーションが京都の言葉と大阪と神戸と微妙に違うとか、生粋の上方弁を操ることができる噺家は意外に少ないとか、なんかいろいろおっしゃいますが私にはみんなおんなじに聞こえるし、たぶんほとんどのお客様がそうだと思います。

よく江戸落語上方落語はどこがどう違うのか、って聞かれることがあるけど、はっきりいって別のものです。全然違うものです。 あの独特のイントネーションで流れるようにしゃべくることでもわかるように、上方落語はまず、「上方弁」が先にあって、演者はその言葉のあとからついてくる感じでしょうか。学生の大会を見ればよくわかるのですが、学生の大会では明らかに上方落語が有利です。

大学の落研の稽古の中身をみると、関西のほうが圧倒的に指導方法がOBの充実度も含め確立しています。それは上方落語という一つの完成されたパッケージを、それごと模倣させる手法をとることができるからです。わかりやすく言うと、食事の支度に時間をかけることがなかなかできないおかあさんが、夕食に必要な野菜や肉などを一人分ずつ分けて、調理しやすい状態で各家庭にお届けする食材宅配サービスを利用する、まさにあの「一人前食材」が一つの噺だと考えればよいかと思います。その食材を食べさえすればあらかじめ計算された栄養を摂ることができるのと同様、稽古さえすればその人の個性がどうでもその言葉の言い回しで人を笑わすことができる点で、上方落語は学生に教えやすい側面を持っています。 ですが、それは同時に誰でも同じような噺をする人が学生に増えていくということでもあります。誰を聞いてもそこそこ笑えるが、逆に誰が何の噺をやったかということをすぐに忘れてしまうほどイメージが一緒になるという危険をはらんでいます。 落研に在籍できるのは多くて4年程度、その期間にお客様に聞かせるレベルまで持っていくというものが主目的だとするならば、上方落語はとても学生向きの教材だということができましょう。

しかし、学生向きであるということと、プロが仕事としてやっていくことは全く同じではありません。上方落語で学生タイトルを取って鳴り物入りでプロに入っても、そこで通用するかどうかは全く未知数です。どうしてなのか。プロとアマの間には技術の差がありすぎて、修業をしなければお客様をつかむことはできないからなのでしょうか。 私は違うと思います。あまりにもこの「上方弁」の個性が強すぎて、その殻を破って自分の個性を出してゆくという作業が江戸に比べて数倍、いや、下手をすれば数十倍大変だからだと考えています。

改めて見てみると、今関西で人気があり、大きな会場がすぐにいっぱいになるような観客動員力を持つ噺家さんは誰なのか。またその落語家は落語だけでのし上がってきた人ですか??仁鶴、三枝、鶴瓶、八方、文珍、ざこば・・・。 みんな、落語で人気が出てきたのではないんです。先にテレビのコメディアンとして名前を売ったから、その人たちの落語を聞きにみなさんが来て下さっている。つまり落語を演じているだけでは自分の個性を出すことがなかなかできないのが上方。上方落語というジャンル・・・・。

何年か前に落語に詳しい方と話すことがあり、その方が上方落語をやるアマチュアや学生、はたまたプロの若い人に至るまで、みんな「枝雀」になっている、とおっしゃっていたのを聞いてとてもうなづけるものがありました。でも、枝雀のコピーはコピーにすぎない。その上をゆく個性派落語家が現れなくては未来はない。 そんな危機感を持ったからこそ、純粋に落語をやりながらのし上がってきた雀々師匠が環境を変えたくて東京にお引越しをされたのではないか、私はそんな邪推をしました。

東京における昇太、喬太郎遊雀、一之輔、白鳥、白酒にあたる年齢の粋のいい上方の落語家が少ない、そんな気がするのです。 学生時代にキャラ作りが間に合わなくても、江戸落語をやる学生は自分のやってきた落語の中で少しずつ少しずつ肉付けをしながら、卒業後にプロの門をたたく人が増えている、それは、最初はとてもうまくなるのに苦労しても、将来にはきっと役立つという江戸落語の特性によるものだと、私は思うのであります。 どちらが良いかという問題ではありません。

でも、ここ数年上方落語の公演を多く手掛けてきて、楽しみな若手が少しずつ育ってきたような気がしています。東海地区においてあきらかに関東に観客動員が劣っていることは事実ですが、その状況下で今後上方落語をどう広めるか、認知させていくか。
MUGEプランニングの次の目標はそこに置きたい。東西の二人会を数多く開き、お客様に違いを味わって頂き、その上で上方の魅力も訴えていきたい。
2024年はまずはそこに目標を置きたいと考えています。
本年もよろしくお願い致します。