MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

【アニさん達への鎮魂歌】~2/12 扇遊・鯉昇二人会 その1

親しくさせて頂いている先輩席亭と電話で話す。
「ここんとこ、大御所の人気が上がっている感じしない?前売り券の伸びが、その年代に限って凄くてさ」
おっしゃる通り、今回の扇遊鯉昇二人会は、前の二回よりチケットが伸びていた。
鯉昇師匠に人気があるのは今に始まったことじゃないとは思うのだが、今までどちらかと言えば実力派であるけれど地味な印象のあった扇遊師匠が見直されてきたことは、とても席亭として喜ばしいこと。もしかしたら昨年から今年にかけて数多くの寄席芸人さんが旅立ってしまったことで、お客様がその年代の「今」を見ておきたい、と思ったんじゃないかとも思っています。いずれにしても過去最高のお客様の見守る中の二人会、素晴らしい会となりました。

「つる」   十八
「干物箱」  扇遊
茶の湯」  鯉昇 ~中入り~
初天神」  喬路
「日和違い」 鯉昇
井戸の茶碗」扇遊

「ありがとうございました。干物箱、本屋のぜんさんの
一人キチガイのくだり、あんなバージョンがあるとは知りませんでした」

「ああ、落語協会の形じゃないかもね。
実はこの噺、小柳枝師匠に教わったんだ
「そうなんですか!!!」
「そして井戸の茶碗志ん橋師匠なの。つまり今日の2席は、僕なりのありがとう、っていう思い」

扇遊師匠、かっこよすぎです(涙)。
                               ~つづく         

 

【崎陽軒のシューマイ】~2/10 玉川太福松本独演会

「2/10は鈴をよろしくお願いします。これ、つまらないものですけど」
1月8日、大須演芸場の楽屋でみね子先生にいきなり崎陽軒のシューマイを戴く。
言うまでもなく、松本の鈴さんの件。
ご自分の激動の半生の中で、絶対ありえないと思っていたという弟子入り志願。

「あたしなんか、弟子を取れるわけないじゃないか」

信州小諸出身の一人の学生が弟子になりたいと言ってきた時、太福さんはみね子先生がそうおっしゃっていたと話して下さった。

浪曲師と違い、曲師はあくまでも浪曲師の対のもの。自分一人が売れるという性質のもので無し。まして浪曲というジャンルが十数年前は絶滅危惧種と呼ばれるほど衰退していたことを考えると、大学卒業前の娘の弟子入りの申し出など受けるはずもないのは当たり前。まして、ご両親があまり賛成していないという。

そりゃあそうでしょ。大事な娘が信州を出て東京に行くことだって切ないのに、「浪曲?」「じゃなくて??」「曲師ってなあに???」

そんな四面楚歌の中、この学生は卒業後も就職せず、あきらめることなく、みね子先生のもとへ何度も何度もお願いに行った。約1年半後、根負けしたみね子先生が弟子入りを許可した2020年春。芸名、玉川鈴。

コロナが猛威をふるっていた時期と言うこともあり、地元にもほとんど帰ることなく修行に励んで3年経った夏、太福さんの会に曲師として同行していた鈴さんに同郷であることを告げ、松本でいつも会をやっているというところからとんとん拍子に話が進み、実現した玉川太福松本独演会。それはコロナ明け、やっと実現した鈴さんの凱旋公演でもありました。

清水次郎長伝~石松三十石船」太福
浪曲講座~信濃の国合唱」太福&鈴
男はつらいよ~寅次郎紙風船」太福

浪曲講座終演後のサプライズ花束。
出身地長野県民の必須科目、信濃の国の三味線伴奏。
そして太福さんの新作とスイングした三味線の音。

終演後、お客様への送り出しを済ませ、高校時代の同級生やご両親、親戚のもとへ。
つかの間の家族との再会、この時だけ玉川鈴ではなく「小林はるな」になっていた。
「迷惑をかけちゃいけないからあたしはいかない」と最後まで来るのを迷っていた96歳のおばあちゃんが最前列で信濃の国を歌ってくれた。そのおばあちゃんのの手を何度も何度も握って涙ぐんでいる彼女を遠目で見て、なんかちょっとだけいいことをしたような気になった自分がいました。

「初めて家族の前で、親戚の前で弾くことができました。
公演を企画して下さり、本当にありがとうございました」

翌日、丁寧なラインが届いたので、私はこう返信しておきました。

「次回は師匠(みね子先生)と一緒に凱旋公演しようね」

それまで元気でいて下さいね、おばあちゃん。

 

「そういえば松之丞さんもそうだった」~2/4 神田松麻呂独演会

11年前の2013年7月、今を時めく桂宮治、神田伯山(松之丞)のお二人を招き長野・岐阜の二ヶ所で落語会を開きました。長野は松之丞さんはゲスト枠で山田真龍軒。そのまま車で岐阜に移動して、岐阜のお寺で2席ずつのたっぷりな会。

宮治さんの芸はあまり覚えていないけど、松之丞さんはそれこそ汗をほとばしらせながらの長講2席。若さの特権とは言えそもそも笑いどころの少ない講談での重いネタ2つ、その時期の松之丞さんはけっこうそんな感じの高座が多かったと思います。
とにかくド迫力、いつでも全力投球。うまくてすごいけどちょっと疲れちゃう、そんな印象だった2013年。

それから11年後、今回の独演会で松麻呂さんがかけた3席。
寛永宮本武蔵伝~吉岡治太夫
「細川三代 出世の松飾り」
「佐倉義民伝~甚兵衛渡し」松麻呂

人によって内容は違うのかもしれないけれど、松麻呂さんは3席とも全部ストレート勝負、クオリティーはものすごく高いのだけれど、とにかく重め。
あとで複数の常連さんが「軽いネタがひとつあったほうが良かったかも」と言っていたのを聞いた時、私は11年前の松之丞さんを思い浮かべました。

あの時の松之丞さんも、そうだった。やるネタ全てストレートだった。
若いうちは、ストレート勝負。速球のスピードが落ちてきたら変化球投手にモデルチェンジ。まさに野球のピッチャーの現役生活そのもの。

松麻呂さんは、明らかに伯山先生と同じ道をたどっているんだ。
間違いなく、それは出世への一里塚。彼は、たぶんやる子です。
そして彼の次の登場は「慶安太平記」連続読み。
絶えず前を行く伯山先生の背中を見てる、松麻呂さんにご期待ください。

 

「いつもそこにいた人」~扇橋報告FINAL

入船亭小辰、そして真打昇進、襲名して扇橋。彼の落語に衝撃を受けた5年ほど前から、ずっと会を開いてきました。二つ目時代は龍玉・馬るこ・喬介・文菊・宮治。
昇進後は一之輔・扇遊・駒治。先輩に胸を借りるというコンセプトも今回が最後。
次回は後輩 朝枝さんとの会、それを経ていよいよたった一人の会になだれ込みます。
だから今回の駒治師匠との会は、扇橋師匠が甘えられる最後の会。まして駒治師匠とは歳も近く、兄貴のような存在。控室ではふたりで、いろんな話に花を咲かせていました。

まもなく開演というタイミングで、進行の打ち合わせ。
初めがフリートークと言うことで「何を話せばいいのかな???」と駒治師匠がおっしゃったので、軽く私が話を振りました。

「プログラムにちょっと匂わせたのだけれど、トークの中身、正楽師匠の思い出とかどうでしょうか」

そういうと、二人とも同じタイミングで顔を曇らせました。
「それはもう、決定事項ですか」と扇橋師匠。
「い、いや、一応プログラムには書きましたが無理なら大丈夫ですよ」
「そうですか、よかった」
そのあと、少し沈黙をして扇橋師匠はこう言いました。

「まだ、思い出とか話せないんですよ。ちょっとそんな気分になれない」
駒治師匠も深く何度もうなづく。

「いつも寄席に行けば、そこにいた人がいない、自分の中でそれがまだ重くて」
私はその時、軽はずみにその話題を出した自分が恥ずかしかった。
私たちが客席で拝見していたその何倍も、何十倍も近くで接してきた正楽師匠の思い出なんて、亡くなって1週間しか経っていないのに話せない。それは扇橋師匠の心の叫び、とも思えました。

「オープニングトーク」ふたり
金明竹」   扇橋
「B席」    駒治 ~中入り~
「首都高 怒りの脱出」駒治
明烏」    扇橋

あの日会場にいらっしゃったお客様、プログラムに書いていたのに取り上げていなくて済みません。そんな事情だったのです。

 

ムゲプラ いち推しの女流~林家きよ彦独演会

「今度うちの直営で、鶴舞にレストランができるんだ。その定休日とかに、落語をやったりすることはできないかな。貸館とかでもいいんだけどね」

親しくさせていただいている会社の社長さまからお話を頂いたのが一昨年。
そのレストランがオープンし落ち着いたころに、そのプランは日の目を見ました。
こけら落としには誰がいいか、頭を巡らせている中で真っ先に思い浮かんだのが、若い人に落語を聞いていただくコンセプトとしては新作派。その新作派の中でもひときわ目立った活躍をしている人。必然として名前が挙がったのが「林家きよ彦」さんでした。

女流の売り方、今現在は美人であるとか、かわいいとか、(まれに「エロい」方も上方にいらっしゃいますが)ルックスでお客様を引き付け、落語の実力は後からつけていく「る容姿第一型」が主流を占めているような気がします。その点きよ彦さんはそのカテゴリには入りません。男性の、どこにでも現れるおっかけのような方が少ない、これは本人もはっきり言っています。ただ、(実はここが一番重要なのですが)ルックスが悪いからそのパターンを踏襲できない、じゃないのです。

お客様に覚えて頂くようにと髪の毛をおかっぱにして「田嶋ヨウコです~」などとおちゃらけていますが、学生時代の彼女は「とてもかわいい酒飲み」でした。
それをあえて隠して売っていく、この手法を取る方は今の江戸の女にはたぶんいません。加えて新作のクオリティーがとんでもなく高い。今回で言えば中入り前と後とでは全く新作のジャンルが違う。なんでも歌舞伎の釣女の後日談を作ってくれと依頼され、泣きながら作った作品らしいのですがその依頼に応えられるクオリティーなのが凄い。

「追っかけ家族」 きよ彦
「保母さんの逆襲」きよ彦 ~中入り~
「釣女その後~太郎冠者お福物語~」きよ彦

今は桃花、祐輔、つる子などのかわいい系女流が人気ですが、ムゲプラはきよ彦さんに注目したいです。間違いなく。上方でいう桂あやめさんのように、歳を重ねてもその年齢に沿った新作で勝負ができる。そんな意を強くした月曜日の夜でした。



 

ムゲプラ4月公演3連発その2~「桂米紫噺家生活30周年記念 大須公演」

毎年秋、若手落語家がこぞってエントリーし、桂二葉さんの「じじいども、見たか!」の発言などで注目を集めているNHK新人落語大賞。その14回優勝者が、芸歴30年を迎え大須演芸場で江戸の噺家さんとコラボします。
その噺家の名は桂米紫

今から25年前の1999年、桂都んぼの名で入門5年目、25歳という若さで大賞を受賞、その前年の優勝者は柳家喬太郎師匠でした。

今回、2月に大阪の900人収容のホールで師匠、桂塩鯛を招いて30周年記念公演を行なうのですが、上方落語一色のこの公演とは別に名古屋でも、その実力をもっと広めたい、そんな思いでMUGEプランニングが企画した大須演芸場での公演は、昼が新作・改作公演、夕方が古典の公演と米紫さんのマルチな才能がいかんなく発揮されるプログラムを組みました。

昼は、江戸の女流新作派二人、林家きよ彦、鈴々舎美馬との新作共演。
「マニュアル通りにデートしてみた結果www」を含め3席と、フリートークも予定。
17:30からは一転、爆笑落語のカリスマ瀧川鯉昇師匠を招いてのガチンコ二人会。
2席ずつ。これは見逃せません、

チケットは 
mugeplan51@au.com 

070 2673 1203

で絶賛発売中です!ぜひお越し下さいませ!

 

ムゲプラ4月公演3連発その1~「扇々喬々」

新年度早々、MUGEプランニングでは見逃せない公演が3つ。
ひとつめは毎年おなじみ、扇辰、喬太郎のおふたりが2席ずつ演じる扇々喬々。
あっという間に7回目です。
喬太郎師匠は名古屋では絶大な人気を誇ります。
一年に、たぶん10回は来ている感じながら、MUGEプランニング公演としてはこの会のみです。他はほとんどホール落語なので、お客様の数も250から400ぐらいまでのキャパですがこの会は必ず大須演芸場。たぶん今現在名古屋で至近距離で喬太郎を堪能できるのはこの会だけ、と言えると思います。
加えて扇辰師匠とは若手の頃から二人会をやってきたいわば同志なので、気合の入れ方が尋常ではありません。大須での喬太郎ワールド、今年もぜひ。

mugeplan51@au.com

07026731203 で発売中です。