「今度うちの直営で、鶴舞にレストランができるんだ。その定休日とかに、落語をやったりすることはできないかな。貸館とかでもいいんだけどね」
親しくさせていただいている会社の社長さまからお話を頂いたのが一昨年。
そのレストランがオープンし落ち着いたころに、そのプランは日の目を見ました。
こけら落としには誰がいいか、頭を巡らせている中で真っ先に思い浮かんだのが、若い人に落語を聞いていただくコンセプトとしては新作派。その新作派の中でもひときわ目立った活躍をしている人。必然として名前が挙がったのが「林家きよ彦」さんでした。
女流の売り方、今現在は美人であるとか、かわいいとか、(まれに「エロい」方も上方にいらっしゃいますが)ルックスでお客様を引き付け、落語の実力は後からつけていく「る容姿第一型」が主流を占めているような気がします。その点きよ彦さんはそのカテゴリには入りません。男性の、どこにでも現れるおっかけのような方が少ない、これは本人もはっきり言っています。ただ、(実はここが一番重要なのですが)ルックスが悪いからそのパターンを踏襲できない、じゃないのです。
お客様に覚えて頂くようにと髪の毛をおかっぱにして「田嶋ヨウコです~」などとおちゃらけていますが、学生時代の彼女は「とてもかわいい酒飲み」でした。
それをあえて隠して売っていく、この手法を取る方は今の江戸の女にはたぶんいません。加えて新作のクオリティーがとんでもなく高い。今回で言えば中入り前と後とでは全く新作のジャンルが違う。なんでも歌舞伎の釣女の後日談を作ってくれと依頼され、泣きながら作った作品らしいのですがその依頼に応えられるクオリティーなのが凄い。
「追っかけ家族」 きよ彦
「保母さんの逆襲」きよ彦 ~中入り~
「釣女その後~太郎冠者お福物語~」きよ彦
今は桃花、祐輔、つる子などのかわいい系女流が人気ですが、ムゲプラはきよ彦さんに注目したいです。間違いなく。上方でいう桂あやめさんのように、歳を重ねてもその年齢に沿った新作で勝負ができる。そんな意を強くした月曜日の夜でした。