MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

入船亭小辰、最後の大須演芸場。【残券 些少】

いよいよ真打昇進まで1ケ月となりました。
懇意にしている扇辰師匠の下に弟子が入ったと聞き、その方から「今度の弟子は達人だよ」と言われたのでどんな経歴なんだと驚いたのが昨日のことのように思い出されます。(前座名は辰じん)

あれからはや14年。真打となり大師匠の10代入船亭扇橋を襲名します。
たぶんみんな、襲名するのにふさわしいと納得した上でのことだと思います。
それほどうまく、面白い落語家さんです。

おりしも前日の9/10は披露パーティーだそうで、そんな日の翌日に会を開けるなんて!最後の刺客は笑点新メンバーの桂宮治師匠。
落語協会の最高傑作の小辰さんと、芸協の最高傑作の宮治師匠。
いつもプロレスに例えて申し訳ないけれど、昭和の時代、宿命のライバルであったアントニオ猪木ジャイアント馬場の対決のようなにおいがするのです。

宮治師匠と小辰さんは、入門が2008年2月、そこから絶えず前を走っていたのは宮治師匠。小辰さんはその背中を追って今日まできました。
猪木と馬場も、入門もデビューも同じ日ながら、いつも先に行っていたのは馬場。猪木はいつの日か馬場に追いつけ、追い越せと心に思っていたとその心境を語っています。

小辰さんにとってこれからもライバルになるであろう宮治師匠が、小辰を熱くする会の最後の刺客。9.11、一階席まだあります。二階席も見やすいですよ!

令和4年 9月11日(日)14:00 大須演芸場
辰のオトシゴ5~小辰を熱くする会FINAL
出演 入船亭小辰 桂宮治(各2席)
全席指定 1F¥3800  2F¥3500(前売・当日共) 
mugeplan29@au.com(24時間対応)

09041533562 (10:00~20:00)

 

21年前と同じ匂い・たたずまい。春風亭朝枝、名古屋で跳ねる。

平成11年、私の故郷の長野県であるひとりの二つ目さんの落語を聴きました。
まだ二つ目になって2年、26歳の若さにもかかわらず、しっかりした口調で将来の飛躍を感じさせたあの落語家。あれから21年、令和4年6月12日、あの時の印象と同じ、しっかりした口調の落語家さんに出会いました。

朝枝さんの噂は以前から耳にしていました。というか、一朝師匠のおつきの前座さんとして4年前に聞いていました。その時は、口調が橘家圓太郎師匠にそっくり、ということで驚いた記憶があるのですが、今年の2/27に一朝師匠との親子会を企画して、二つ目になってどういう風に変わったのかも楽しみにしていました。

ところがこの公演は一朝師匠のコロナ感染で三朝師匠との会になり、その時「あれ、以前のイメージと違うなあ」と思いました。三朝師匠の元気のいい高座に挟まれての古典2席でしたがあまり個性を前面に押し出していない印象でした。

ところがこの日の三席は、誰に遠慮をすることもない自分だけの落語ということで、2月とは真逆の個性的な高座でした。隠居のキャラ、小僧のキャラ、おかみさんのキャラ、職人のキャラ、そのすべてが所作も含めて演じ分けができていて、変なくすぐりを入れることなくお客様の笑いを呼び起こす。落ち着き払ったいい高座でした。

「たらちめ」「茶の湯」「締め込み」

落語協会は様式美」と前にもブログで述べましたが、その流れをしっかりと受け継ぐ見事な落語。これからもその成長を、ライブで見届けていきたいと思います。

21年前に同じ匂いを感じた二つ目さんは、今は落語協会理事、堅実に名人への道を歩んでいます。その落語家さんの名は・・・・柳家三三

 

【足掛け18年の歴史に幕。さようなら郡上寄席。】

郡上おどりで有名な郡上八幡のお寺で「大寄席」としてあの永六輔さんのプロデュースで昭和50年から32回の長きにわたり開催された「郡上大寄席」。第一回は永六輔小沢昭一桂米朝柳家小三治入船亭扇橋といういずれ劣らぬビッグネームの共演で始まりましたが、永さんの体調不良もあり平成18年に幕を下ろしましたが、その終了を惜しむ方々に依頼されて当社が、規模を縮小して旅館の広間に会場を移して今年のFINALまで足かけ18年、「郡上寄席」として15回にわたり継続してまいりました。

出演者

林家木久扇
林家正蔵
柳家喬太郎
三遊亭遊雀
柳家三三
柳家小せん
三遊亭兼好

今の落語界に名を馳せる噺家さんの二人会の形で続いてきたこの会も実行委員の高齢化、コロナの影響などの要因が重なり今回が最後の開催となったのです会場には100人近くのお客様が詰めかけ、最後の会の立会いをしてくださいました。

「禁酒関所」金葉
高砂や」兼好 「ガーコン」小せん
「茄子娘」小せん 「宿屋の富」兼好
そして皆さまとご一緒に、別れの手締め

 

何事も、最後というのは思い出が駆け巡る空間。そしてその最後の会に、駆け付けてくださった、昭和の名俳優、レジェンド。

近藤正臣さんをはさんでの小せん兼好、貴重な貴重な3ショット。
コロナに阻まれながらやっとの思いで開催できたこのFINAL。みんないいお顔。
私もこの会に携われたことは、一生の思い出になると思います。
ありがとうございました。さようなら、郡上寄席。

【按摩の目】~雲助たっぷり(五街道雲助独演会)

ここのところ、独演会の時は長野や岐阜、名古屋など場所を問わず3席か、あるいはゲストを呼んでの2席というパターンがほとんどでした。それに倣い、前回の雲助たっぷりは雲助師匠と二つ目さんのこはくくんで2席ずつというプログラミングだったのですが今回初めて、前座さん以外は雲助師匠のみで2席、という形でお願いしました。

長講をたくさん演じていらっしゃる雲助師匠であれば、その流れでお客様を満足させて頂けるという確信があったからこそなのですが、期待以上の熱演をして頂きました。

「堀之内」あられ 「ずっこけ」「猫定」雲助

ずっこけは、前回こはくさんがいらっしゃった時にかけていた噺で、中入りの時に前座さんに言われて「ああ、そうか、自分のネタしか気にしてなかった、すまん!」
と謝っていらっしゃいましたが、はからずも年輪を重ねていくと同じネタでも全く印象が変わる、ということを体現されたネタになっていました。素晴らしい出来。

トリの猫定、では登場人物が3人と登場猫物1猫が死ぬ話。
怪談噺に近い噺ですがその描写の鮮やかなこと。後味を悪くさせない絶妙の間で、お客様が引き込まれていくのが舞台袖からでもわかりました。特に「按摩の三味市」のセリフの時の按摩の目のかたち、これだけで銭が取れると言ってもいいくらいの凄さ、素晴らしさでした。

お客様の満足そうな表情をみて、この路線をきちんと踏襲していくのがMUGEプランニングの使命だと、そう思った日でした。師匠、ありがとうございました。次回は11/27、またネタだしを考えております。お楽しみに。

 

二つの顔を持つ男~5/14柏崎&5/15 長野 一之輔独演会~

土日と、出張公演に行ってきました。
土曜日は、柏崎。ここには昭和35年に発足した柏崎芸術協会という組織があり、平成21年よりお付き合いさせて頂いていました。しかし、平成23年東日本大震災、それに伴う柏崎刈羽原発の停止などが重なり会員数も年々減少する中、第518回となる今回(MUGE公演はそのうち14回)をもって63年に及ぶその歴史に幕を閉じることになり、最後を一之輔師匠が締める、そんなちょっとしんみりした雰囲気でした。

そんな雰囲気の中、一之輔師匠が見せたのは、地方のお客様、中でも約7割を占めるお年寄りに絶対心に残るであろう爆笑噺と人情噺をもってきて、見事にその大役を果たしました。お客様は腹を抱えて笑い、そして最後は思わず涙していました。
漫才のデニスもいい味を出していました。最後の例会、お客さまにも、協会役員の方にも、喜んでいただけたのではないでしょうか。

「やかん」与いち 「欠伸指南」一之輔~中入り~
「漫才」デニス 「子は鎹」一之輔

明けて15日の日曜は、三年ぶり、北野文芸座での独演会。
昨日とうって変わって、一之輔ファンが多数を占める長野県で最もコアなお客様。

金明竹」㐂いち 「反対俥」「普段の袴」「百川」一之輔

いつもの爆笑マクラからのスキのない三席。コロナの影響の中、待ちかねたムード満載の寄席、物販の文庫本も完売しお客様大満足のお開き。

春風亭一之輔。彼の引き出しには、あと何回分の噺のストックがあるんだろう。
売れっ子になる噺家には、それなりのモノがあるのだということを改めて見せつけられた二日間でした。



 

「究極の様式美がそこに。」~小辰を熱くする会~雑感

だんだん、お客様が増えてきた。小辰という噺家の価値が理解されてきた。
4回目を迎えたこの会で、間違いなく小辰さんは成長されたと感じています。
1回目から来ているお客様が、はっきりアンケートに書かれていることがその証拠。
そしてその小辰さんの前に立ちはだかる噺家さんはいつもそれ以上。
今回もまた、「ザ・様式美」とも呼べるような刺客がたちはだかりました。

2022.5/8 大須演芸場 小辰を熱くする会4 

「オープニングトーク
「欠伸指南」小辰  「厩火事」文菊
湯屋番」文菊   「鰻の幇間」小辰

登場から、いつもの腰を落とした足取りで文菊師匠登場。
座布団に座ってからの全ての所作に無駄がない。気取っているとか、品があるとか、そんな陳腐な言葉では形容できないほどの存在感。ともすれば嫌みに聞こえる危険もあるのに、まるで意に介さない。これぞ究極の様式美。そこから発せられる本寸法の落語がとにかく耳に心地よい。厩火事も、湯屋番もありふれた、誰しも高座にかける噺なのに、文菊師匠の手にかかると実に味わい深く聞こえます。まさに若手のホープと言っていいと思います。

この分野では、たぶん小辰さんは太刀打ちできません。というか、太刀打ちする気がないと思います。いつものように噺の幹を崩さない範囲で、内容をどんどん膨らませてゆく。トリのウナタイは、まさにその究極の形でした。

さて、辰のオトシゴ、小辰を熱くする会も次回でFINAL。
最強最大の笑点レギュラー、桂宮治師匠がやってきます。私の中ではまさに対極の対決、新日本プロレス頂上決戦っぽいイメージなのですが、宮治師匠は反則ぎりぎりの場外乱闘も得意です。小辰さんが引っ張り込まれないよう、お客様も見守って下さい。

 

「芸協に、こんな凄い噺家もいる」

「相手がワルツを踊るならワルツを、ジルバを踊るならジルバを踊れ」
これは、今は亡きプロレスAWA王者、ニック・ボックウィンクルが父親から教わったプロレスラーの理想形。観客がいて初めて成立するプロレスの極意を語ったものです。

5.1・円頓寺レピリエの夢丸独演会には、そんなニックのレスリングに匂いがしました。
この場合の「相手」とは、もちろん観客。落語家さんにとって、その日のお客様の傾向をいち早くつかみ、それに対応した笑い、ネタを出していくことが何より重要と言われています。

実は名古屋の落語の大好きなお客様には、全体的に一つの傾向があります。それは
「東京で噺家さんが演じる実験的なネタ、コアなネタ、貴重なネタを、東京に行かずとも名古屋で聞ける場」を求めることです。

基本、噺家さんは地方では鉄板ネタを持ってきたがる傾向があり、そのネタが被ることが多々あります。結果、どの噺家さんでも「井戸の茶碗」「紺屋高尾」春なら「長屋の花見」ばっかり、などになってしまうようなことがあるのです。

しかし、隠れた珍しい噺を持ちネタにすると、そもそもあまり演じられない噺→面白くない噺 というハードルがあるせいで、お蔵入りにしてしまうことが多い。
でも今回の夢丸さんには、そんな常識は通用しません。「殿様団子」「てれすこ」「山崎屋」どれもあまり演じられない噺なのに、そのどれもが面白い。しかもどの話にも夢丸師匠のキャラクターが見事に乗り移り、登場人物が明るくなっていき、そのハチャメチャぶりがたまらない、まさに夢丸ワールドが形成されていくのです。

前述のニックのたとえを当てはめるなら、敬老会に行けば爆笑ネタ、東京では実験ネタ、という普通のチョイスではなく、踊り方を変える、つまり噺の演じ方を変えるのが夢丸流なのです。

前座の頃は元気がいいだけの高座だった春夢さんが、ここまで立派になられた。
さらに、いろんな「踊り方」ができるようになった。成金だけじゃない、芸協にはこんな凄い噺家さんがいるんだ。名古屋のお客様がやっと気づいて下さった。

さあ、ここから夢丸師匠の時代が始まる、そんな気がする独演会でした。

「殿様団子」「てれすこ」「山崎屋」夢丸