MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

【異端を貫く覚悟】~鈴々舎馬るこ噺家生活20周年記念公演雑感~

「イタコ捜査官メロディ」私が初めて馬るこさんを聴いたのはこのネタ。
場所は2009年、文化放送の中のホールで行われた浜松町かもめ亭。
トリの扇辰師匠を聴くつもりで足を運びました。中入り前が談笑師匠でしたが、他の仕事があるのか出番が変わり、中入り前に代わりに上がったのがまだ二つ目になって間もない馬るこさんでした。

出囃子がUWFのテーマで、なんとギターを携えて高座に上がった二つ目さん。
奇抜ないでたちから繰り出した新作は、想像をはるかに超えるぶっとんだものでした。
主人公がオカマ、寺の名前がロセンジ、その発想たるや落語協会なのに全く本道を行かない。その頃古典の本寸法にかなり飽きていた私には彼の高座はとても新鮮に映りました。

その後会にお呼びするにつれ、彼がUWF(昭和~平成に存在したプロレス団体)の大ファンだったことでさらに意気投合。私が岐阜で企画した学生落語の大会の司会をずっとつとめて下さるなど、とても親しい関係を続けてきていました。

落語の実力もうなぎのぼりで、2010年にさがみはら、2013年にNHKの新人落語大賞に輝いて2017年に真打昇進、同時にBS若手大喜利のメンバーとして起用されて知名度もアップしたのですが、長年彼を聴いている自分は、落語協会という組織の中にいて、彼の破天荒な部分が少しずつ失われているような気もしていました。

今は新ニッポンの話芸ポッドキャストなどで立川こしら師匠とコンビを組む仕事に力を入れていらっしゃるようですが、立川流所属という部分でも新作のぶっ飛び度合いはこしら師匠のほうが上なので、放送の中でも意味もなく彼にいじられたり馬鹿にされたり風下に置かれているような気がして、馬るこ師匠がどの方向にこれから舵を切っていくのかがいまいちわからないところが事実、不満でもありました。

仮に笑点メンバーが目標ならば、こしら師匠と組む今の状況は決して好ましいとは言えない。異端を突き詰めるならば落語協会所属というプライドを持って遠慮なく異端のトップを究めてほしい、そんな願いを込めてのこの日の公演となりました。

「STUDYしまっせ~大阪弁(三枝作)」文りん
「童謡づくり」きく麿
「いぼめい」馬るこ ~中入り~
「思い出トーク」馬るこ・きく麿・桃花
「表彰状」桃花
「水屋の富」馬るこ

鈴々舎馬るこは異端の城の城主。
他の噺家を従えることはあっても従って歩む噺家ではない。これからの鈴々舎馬るこ師匠にはそうあってほしい。名古屋のファンの気持ちもたぶんそう。じゃなければこれだけの人は日曜夜開催の会には来ません。ますますのご活躍を、期待しています。