MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

【高座の上のダイビング】~鈴々舎美馬 二つ目昇進前祝い・新作の会雑感

「私、彼女とは落研時代からの付き合いで…。イメージは、火焔太鼓で高座にダイビングしていた印象しかなくて」
中入り後、高座に上がった林家きよ彦さんがそう思い出を語った時、生でその場面に遭遇したあの日のことを思い出した。たしか岐阜、策伝大賞第12回。決勝進出者の中でもひときわ小さい体躯で彼女は、高座に確かにダイビングしていた。学生だからこそ許されるパフォーマンスもとはいえ、あんなかわいい子が…と驚いたことが思い出される。

資料を紐解いてみたら2015年のこと。それから8年、大須演芸場の彼女は、100人の観客に迎えられ、前座最後の1か月を迎えていた。

鈴々舎一門に入門し、見習いをあわせて前座生活約6年。女の盛りの20代を落語だけに費やしたそのど根性は、いったいあの小さな体のどこに潜んでいたのか。
まだ二つ目になっていないのに、写真週刊誌に「アイドル落語家」と紹介されるまでになった彼女ではあるけれど、それは彼女が本当に望んでいたことなのか、と問われたら、私は「違うと思う」と答えるだろう。

女性落語家の生きる道。短い期間ならば女性目線での落語が受けるかもしれない。
でもずっと先まで落語家としての地位を築いていくのであれば、私は「新作落語」以外にないと考えています。古典落語が男性を想定して作られている以上、ある意味宿命ともいえる。でも逆に新作落語を作っていくのであれば、可能性は広がっていく。
鈴々舎美馬を応援していく、バックアップしていくのであれば美馬の会は新作の会としていこう。そう思ってこの会をセッティングしたのは、やはり間違ってはいなかった。

「長短~英語落語」文りん
エステサロン」美馬
「スナックヒヤシンス」きく麿~中入り~
「舞人(まいんちゅ)」きよ彦
エステサロン3」美馬

 

「女性ばかりの出演にすればよかったんじゃない?」ある方にそういわれた。
でも、会のクオリティーを考えるなら、彼女ら3人だけでは心もとない、野球で言うならやはり酸いも甘いもかぎわけたベテランの一振りが重要。きく麿師匠をお願いしたことは、何気にヒットだった、そこは確信しています。

二つ目昇進を11月に控え、一門のアニさんが真打昇進披露公演をやっている以上、立前座として寄席に出なければ、そんな責任感からの超ハードスケジュールで美馬さんのコンディションはあまり良くなかった。疲労が極限までたまっていると判断して先に帰ってもらったけれど、何よりも体が資本。体調を戻してまた、あの新作落語を聞きたいなあと思わずにはいられなかった、そんな秋の一日でした。