MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

扇遊鯉昇二人会、ささいなハプニングでほっこり。

昭和28年生まれ、花のニッパチ、同期会。
鯉昇師匠とお付き合いを始めてかれこれもう20年以上になります。
お呼びした回数も数知れません。どこにでも、どなたとでも、快く会にいらして下さる師匠です。その師匠が前回の松鯉先生との会のあと、ぼそっと「扇遊さんとどうですか」とおっしゃいました。その言葉の端に、「いい会になると思います」という自信が感じられたので、すぐにお願いをして実現した「遊はrakugoに鯉してる」第一回。控室で種類の違うサンドイッチの中身を半分ずつ分けているのを見た時、この会の成功を確信しました。

「道灌」篭二 「天狗裁き」扇遊 「質屋蔵」鯉昇 ~中入り~
鰻屋」鯉昇 「明烏」扇遊

こんな両極端な芸風なのに見事にスイングするなんて。

中入り後のフリートークの時も仲良く、つつがなく誕生日サプライズも終了、後半の鯉昇師匠の鰻屋の最後のシーンでハプニングはおきました。なんと師匠、鰻を捕まえようとして立ち上がる場面で捕まえるふりをしながらそのまま高座を下がってきたのです。

「えっ???」

何の前触れもなくさがって来た師匠を見て、扇遊師匠も準備をしていなかったのでみんなびっくり。慌てて高座に上った扇遊師匠は、「何をしてくるかわかりませんからあの人は・・」と高座で笑いながら愚痴る。前座の篭二くんも予期せぬタイミングで出囃子がなったのであわてふためく。「いったい、何があったんだ!!??」と狼狽する篭二くんの横をすり抜けた鯉昇師匠がにやっと笑ったので、私が突っ込む。

「師匠、あんな下がり方、きいてないですよ!」
「いや、変わったバージョンでね」
「あらかじめ言っといてくださいよ!」
「えっ??ちゃんと遅れずに出囃子かけたじゃない」
「・・いやな予感がしたんですよ。」
「でしょ?音響があなただから大丈夫だと思ってね」

そう、まだ私がこの仕事に就くずいぶん前に、田舎の旅館組合主催の寄席に上がった楽太郎時代の円楽師匠が、「疝気の虫」の下げで「別荘はどこだ??別荘、別荘!!!」と探しながらさがって来た時以来二度目の体験だったので、準備ができていたのです。

身をもって体験したことは、30年前のことでも忘れませんでした。
「あなたなら、だいじょうぶ」
信頼されているのかなあと、変なところで感激した出来事でした。

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東から新作、西から力技。

1/30日曜日。この日は東海地方で落語会花盛り。喬太郎師匠も、一之輔師匠も、宮治師匠も、各ホールにご登場の中、円頓寺レピリエで昼夜の公演。

昼はきよ彦さんの新作。

女性の視点で、かといっていやらしくなく、自分の体験を織り交ぜながら展開していく新作が3席。もちろんまだまだ粗削りではあるけれど、新時代の落語家がどうやれば大衆に受け入れられるかを模索しながらここまできた彼女。

ネットのラジオで自分の声を発信しながらの営業努力が実った感じで、彼女を見たい、というお客様が一定数集まった中で、精いっぱいのパフォーマンスを見せて下さいました。円丈グランドチルドレンという、ちょっと大げさな形容詞に見合う努力家。
報われないことのほうが多い名古屋の新作というジャンルに、一輪の花を咲かせた努力は、将来帰ってくるのだろうなと感じた。

「立ちフリートーク」「反抗期」「正しい同窓会」「憧れ」きよ彦

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そのあとは上方落語の異能派由瓶師匠。
形は崩していないのに、異次元の世界にお客様を連れて行ってしまう古典に、体を張って腕立て伏せやうさぎ跳びが高座の周りで展開される新作落語と縦横無尽な3席。
しぐさのひとつひとつにおかしさがにじみ出る、そんな90分でした。

「癪の合薬」「るうびっくきゅうぶ」「鰻の幇間」由瓶

 

ベールを脱いだ、「シンナゴヤ」。

「ヤバすぎ新作」終了しました。コロナ禍の中、たくさんのご来場。
オープニングトークで円丈師匠の思い出を語っていただきましたが、古典至上主義の雰囲気の中、孤軍奮闘で頑張っていらした師匠でさえ、「新作はもうからない」という事実には抗えなかった、かくもこの道はいばらの道と感じました。主催する立場としても、正直、前売の段階では大須一階席の三分の一しか売れていなくて、今後の開催をあきらめなければ…という気持ちになっていたことは事実でした。

そんな状況の中、年明けして自分の方向性を新作に定め、名鉄名古屋駅を題材にした「シンナゴヤ」をネタおろしする、と公言していた登龍亭獅鉃くんの高座は圧巻。
控室で同じ鉄道落語を得意とする、駒治師匠が「すごいねえ」と舌を巻くほどのクオリティー。これをリクエストした私もここまでに仕上げてくるとは、と感激しました。
開場時には入口に立ち、羽織をまとってお客様にごあいさつ。終演後には満足げなお客様にお見送り。当たり前の話、芸歴は短いけれどこの日の獅鉃くんが公演の中心にいたことは間違いのない事実でした。

ほかの三人のお師匠さんも、そのあとを完璧につなぎ、ヤバすぎ新作史上一番の盛り上がりを演出して下さいました。新作だってお客様を満足させることができるんだ、その手ごたえを感じた公演。アンケートにも「次もやってくれるんですよね!?」とのご要望。はい、少なくとも一年にいっぺんは、大須演芸場でやらせて頂きます!ご来場ありがとうございました。

「オープニングトーク
「シンナゴヤ」獅鉃
「駐車券」駒治 ~中入り~
「殴ったあと」きく麿
「ぼくの彼女はくの一」今輔

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20歳の前座が、会の空気を作った夜~小辰を熱くする会3

小辰、真打昇進まであと8ヶ月。今回の刺客は上方より、笑福亭喬介さん。
名古屋のお客様にはあまり上方落語はなじみがないかもしれないけれど間違いのない実力者。どちらかというと、タイプは小辰さんと正反対でお客様に、その対比を楽しんでいただこうと考えての顔付け。初回龍玉、二回目馬ることきて三回目が喬介、まさにどこから球が飛んでくるかわからない危機感の中での小辰さんの高座が否が応でも注目されました。

「犬の目」喬明
悋気の独楽」小辰
「へっつい幽霊」喬介 ~中入り
「牛ほめ」喬介
「不動坊火焔」小辰

結果から言うと爆笑の連続でお客様の満足度MAX、という素晴らしい会でしたが、実はこの流れを作ったのは前座の喬明さんだったと感じています。
師匠の喬介さんがマクラで「駅員に子供料金のボタンを押させた」と言っていたように、見た目の幼さとは裏腹に立て板に水、しかも笑わせどころできちんと待てる、そのギャップの大きさにお客様が引き込まれ、前座の高座から一気にお客様があったまって、次に小辰さんが上がった時には笑いたくて仕方がない雰囲気になっていたと感じました。そしてそれを察知した小辰さんが開口一番で彼女のことを「一億人の姪っ子」と言ったところから、この会の成功は約束されたものとなりました。

小辰を熱くする刺客、その先陣を切ったのは笑福亭喬明、という意外。
みなさん、彼女の今後にもぜひ、注目してやって下さい。

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新年初公演、太福と頼光の底力。

新春の一発目、MUGEプランニングの公演はここ数年、太福さんで始まっています。
6年前に、浪曲の常識を打破した若手がいると聞いてオファーして、その人間性とバイタリティーに感服して定期的な会をお願いした経緯があります。その期待通り、一年一年人気がじわじわ上がり、今回は大須演芸場1階席をほぼ埋め尽くすお客様。
ゲストの頼光さんとも家が近くて同い年、気を遣わずにできたのではないでしょうか。

「オープニングトーク」  太福・頼光

「地べたの二人~おかずの初日」
「悲しみは埼玉に向けて」太福

「海の水はなぜからい」
雷電為右衛門  涙の土俵入り」頼光

中村仲蔵」太福

個人的な意見ですが、太福さんはスタンダップの芸人さんがゲストまたは相方の二人会のほうが映えるような気がします。今回も古典・新作両方のクオリティーの高いものを見せて頂きました。頼光さんも、助演にふさわしい大活躍を見せてくれました。
この先彼は間違いなく浪曲をアレンジし、今の若者にも理解ができる娯楽に昇華させていくのだろうと思います。そうなってもらわなければ浪曲の将来にかかわります。
太福さん、頼光さん、みね子先生、ありがとうございました!

次回は7/9.10の二日間の続き読み(唸り?)「青龍刀権次」です。お楽しみに‼

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ムゲプラ友の会2022年度会員募集のお知らせ

令和3年、MUGEプランニングの落語・演芸公演にお越し頂きありがとうございました。1月1日より、令和4年度(4月1日から令和5年3月31日まで)のムゲプラ友の会会員募集を行ないます。入会なさると先行予約・割引などの特典が受けられますので下記の要項をご覧いただいたうえでご検討ください。

◎友の会 申込み期間・割引券使用期間・特典・入会方法◎

・申込期間・・・・・・・・・令和4年 1月1日から3月20日まで

・割引券使用期間・・・令和4年 4月1日から令和5年 3月31日まで

・会費・・・ 年間 4000円 <割引券14枚と特製手ぬぐい進呈>

 (注意・令和3年度の会員割引券は令和4年3月までしか使用できません)

・割引券使用方法

 チケット1枚につき割引券1枚使用できます。チケット購入時でなく当日の返金となります。1人で2枚以上使用の場合は同じ数の公演チケット提示をお願いします。通し券などですでに割引済の公演や協力公演については割引券は使用することができません。

・先行予約について

月ごとにハガキが届きます。基本的には割引券の有効期間までの公演についての先行予約対象となりますが、発売日との兼ね合いもありますのでそれまでの会員の方には4月末までの先行予約ハガキをお送りします。また、1月10日までに新規会員になる意思をいただいた方には4月のMUGEプランニングの公演の先行販売に参加をする資格が生じますので、そちらもあわせてご検討ください。
その後の入会は随時のご案内となりますのでご了承ください。

・申込方法

<方法その1>
yajiro@arion.ocn.ne.jp に入会希望メールを送る
(住所・氏名・連絡先電話番号・メールアドレスは必須です)

その後、郵便局の青色振替用紙に住所・氏名・連絡先電話番号を記入し会費を振込む
※注意 必ず通信欄に「令和4年度ムゲプラ友の会 入会希望」とお書き下さい。
記述なき場合は入会手続きができません。

 振替先番号 00840-0-217222  MUGEプランニング

<方法その2>
会場に置いてある(1/9より)申込用紙に住所・氏名・連絡先電話番号を記入の上会費を添えて受付に提出し申込む

入金確認後随時登録させて頂きます。割引券の発送は2月下旬を予定しておりますのでお待ち下さい。(誤使用を防ぐため)

※令和4年度上半期の公演予定

★4/18(月)18:45 名古屋・大須演芸場 

「扇々喬々5」

 柳家喬太郎・入船亭扇辰 各2席 

全席指定 1階¥4000・2階¥3500

★4/24(日)14:00 名古屋・大須演芸場

「オースのジョー11」

 古今亭菊之丞(2席)古今亭まめ菊 ダーク広和

全席指定 1階¥3500・2階¥3000
※この2公演は1/10までに入会希望メールを頂いた方に
折り返し先行予約の日時をお知らせ致します。

 

★5/1(日) 13:00 名古屋・円頓寺レピリエ 「夢丸☆勝ちます」

 三笑亭夢丸独演会 (3席) <自由席>

★5/8(日)14:00 名古屋・大須演芸場 「小辰を熱くする会」

 入船亭小辰(2席) 刺客 古今亭文菊(2席)

★5/22(日)14:00 名古屋・大須演芸場 「雲助たっぷり」

 五街道雲助(2席) ほか

★6/5(日)14:00 岐阜県郡上市 旅館三冨久 「郡上寄席FINAL」

 三遊亭兼好 柳家小せん 各2席ほか <協力公演・自由席>

★6/19(日)14:00  名古屋・大須演芸場 「由瓶・兼好二人会」

 笑福亭由瓶 三遊亭兼好 各2席

★6/26(日)14:00  名古屋・大須演芸場 「松喬・扇辰二人会」

 笑福亭松喬 入船亭扇辰 各2席

★7/9(土)10(日)各14:00 名古屋市中央卸売市場内 まぐろや 

 玉川太福 古典浪曲 続き読み  「青龍刀権次」 <自由席>

★7/17(日)14:00 名古屋・大須演芸場 「きく麿・鯉八兄弟?会」

 林家きく麿 瀧川鯉八 各2席 

★8/20(土) 時間未定(昼) 会場 岐阜 「松鯉・伯山 師弟共演」

 神田松鯉 神田伯山 各2席

★8/28(日)14:00 名古屋・大須演芸場 「文治・小痴楽二人会」

 桂文治 柳亭小痴楽 各2席

★9/11(日)14:00  名古屋・大須演芸場 「小辰を熱くする会」

 入船亭小辰(2席) 最後の刺客 桂宮治(2席)

★9/25(日)14:00  名古屋・大須演芸場 「オースのジョー12」

 古今亭菊之丞(2席) 古今亭まめ菊 (二つ目昇進記念)

★10/2(日)13:00 名古屋・円頓寺レピリエ  「瀧川鯉朝独演会」

 瀧川鯉朝 (3席予定)  自由席

★10/9(日昼)10(月祝昼)11(火夜)笑福亭松喬 還暦+1記念落語会

松喬各2席×3  ゲスト各2席 9昼 百栄 10昼 兼好 11夜 喬太郎

 



 

 

 

【極寒の名古屋、年の瀬に光る四つの原石。】

日本の北半分が真っ白な雪化粧に染まり、寒さに震えたこの日の名古屋。
年の瀬のあわただしい中、MUGEプランニング今年最後の公演を開催しました。
と言ってもいつもの大須演芸場ではなく。那古野の円頓寺レピリエでの昼夜公演。
チラシタイトルに「MUGEプランニングが惚れ込んだ東西の精鋭」と謳った手前、お客様の期待度という意味でハードルはかなり高くなっていましたが、そんな心配も杞憂に終わるほどの個性的な四人が吹き飛ばしてくれました。

第1部
初天神」 あお馬
皿屋敷」 源太  ~中入り~
「人数合わせ」源太
「夢金」  あお馬

あお馬さんの落語は、「様式美」である。
落語協会という最大の組織、そして最もメジャーな「柳」派の若手として、本寸法を崩さない安定感抜群のたたずまいが、古典派のお客様に安心感を与えている。
俗にいうなら「間違いのない」芸風なのである。

対する源太は、四人の中で一番の若さを武器に、「陽気でさわやかな」上方落語
陽気に押しまくるがそこにくどさを微塵も感じさせない明るい芸こそ、源太くんの持ち味。一言でいえば硬派と軟派の組み合わせだがこれが絶妙のバランスでお客様の中に入り込む感じ。「あお馬さんの落語を聴きに来たのですが、これからは上方落語も聞きたい」というアンケートに象徴される、それは素晴らしい落語の本道を行く会でした。

 

第2部
「加湿器」今いち
「画面の向こう」獅鉄 ~中入り~
「ディ〇〇ーほめ」獅鉄
「トライアングル」今いち

第2部は、うってかわって新作対決。「ラーメン屋」などでおばあさん落語で一世を風靡した古今亭今輔の系譜を受け継ぐ由緒正しい新作落語の一門でありながら、袴をサスペンダーで吊って登場し、羽織を脱ぐタイミングでサスペンダーを外す。
あげくに高座の周りをうさぎ跳びで飛び跳ね、挙句の果てに高座の上でリンボーダンスをする、あらゆる意味で客を裏切り続ける今いちくん。またトリでは古典落語のストーリーを現代に変えほっこりさせる新作も披露。

それに対して獅鉄くんは、近未来のSFチックなほろりとする噺と、ただただ歌い続ける牛ほめもどきの噺の二席。彼は江戸でも上方でも培養することができない、まさに雑草のようなハイブリッド落語というべきか。ここ名古屋だからこそ成立したキャラクター。こんなぶっとんだ新作の会は名古屋でははじめてなのでは?と思ってしまうような、個性あふれる会となりました。

今年ももうすぐ終わります。締めの公演は限りない可能性を予感させる素敵な会。
押し迫った師走の寒空に、間違いなく四つの原石が光っていました。

本年はブログをご覧いただきありがとうございました。
どうぞよいお年を、来年もMUGEプランニングを、ぜひよろしくお願い致します。

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