MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

「怪談噺はさらりと演じたい」~松鯉・伯山師弟共演 雑感

当日を迎えるまで、こんなに気をもんだことはなかった。
収容590人の大垣スイトピアセンターのチケットはほぼ完売で、あとはお二人をお迎えするだけというその一週間前に、柳家三三師匠が、立花家橘之助師匠が、三遊亭圓歌師匠が次々とコロナ感染、という知らせが入り、そのたびに肝を冷やす毎日が続いていたのです。まして前日まで師弟は末広亭の10日間、さらに明治座の公演と師弟そろってハードスケジュールをこなしていたこともあり、前日伯山先生のマネジャーから着信が来た時は、胸のドキドキが最高潮に達していました。(持ち物確認でした・笑)

真田小僧」こと馬
太田道灌~山吹の戒め」松鯉
「名横綱 阿武松緑之助」 伯山
「徂徠豆腐」伯山
「小幡小平次」松鯉

終演時間、16:10を想定していましたが約10分ほど早く終演。
トリネタとして「小幡小平次」をやります、とおっしゃって高座に上がられた松鯉先生。小平次が殺される場面など、迫真の語り口でその光景が目に浮かぶほどの名人芸。
そしてそのあと小平次の幽霊が現れて、恨みを晴らす場面でどんな凄惨な描写があるのだろうと息をのみましたが、そこはほとんど演じることなくお開き。どうしたんだろうと正直、心配をしたのです。

「二席おやりになって、お疲れになったのだろうか」
「体調が悪いのだろうか」

でも、高座を降りてきた先生には別段変化もありません。
今まで、何人かの講談師の方で聞いた小幡小平次は、ほとんどがこの復讐劇をおどろおどろしく演じていたので、???の疑問がはれぬまま帰りの車の中へ。
するとご自分から種明かしをしてくださいました。

「最後はあんまり怖くなかったかもしれないけど、あたしはこのやり方なんだ」
「そうですね、あの辺は他の方と違いますね。幽霊がそんなに出てこない」
伯山先生がそうお答えになると松鯉先生は、わが意を得たりとばかりにこうおっしゃいました。」

「あたし、あんまり何人も殺すの、好きじゃないんです」

「怪談噺は、さらりと。」
そういうと先生は「ガハハッ」とお笑いになりました。


ご来場、ありがとうございました。ムゲプラこの夏最大の公演が終わりました。