MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

【新作派の苦悩~11/12愛シテツ3】

鯉八さんの落語は、感性の落語です。ご自分の世界観に沿って、登場人物に色付けをしていくけれど、次の展開が全く読めない、落語ファンにとっては「最高難度」の落語だと私は思っています。反対に、獅鉄さんの落語は「擬人化」の作品が多いような気がします。電車や動物、植物や単なる「物」にまで命を吹き込み、SFチックに噺を展開していく。同じ新作というカテゴリでも、この二人の落語は北極と南極ほどの違いがある、私はそう思っています。

そのふたりが共にNHK新人落語大賞について語ったトークの中身が興味深かった。
「ぼくの落語は誰かの強力なプッシュがないと賞レースの決勝進出はない」
「NHKの時もそういう方が関係者のなかにいたと聞いた」
鯉八師匠のその言葉は、東西で次代の落語を汗水たらして作っている新作派の苦悩を表しているのだと感じました。

東海地方でも、この新作派の師匠は名が知れているから古典派の中に加えておく、という扱いの落語会がほとんどで、中身の新作を聴かせたいから、という主催者が見当たらない。
落語はやはり古典、という空気がまだまだお客様の中に固定観念としてあるという事実に、新作派はずっと自分の構築する世界を「仕事」という経済行為と両立していかなければならない宿命を背負っているのです。

先代から受け継いだ古典をそのまま寸分の狂いもなく演じる「守旧派」、古典のあらすじを基本に面白くなるように変えていく「改作派」が全盛のこの時代を生き抜いていかなければならない新作派のふたり。そこにある種の悲哀を感じるのは私だけでしょうか。
でも一度来た道は行くしかない。そしてその場を提供する主催者がいないなら私がやる、
そんな妙な使命感に燃えた、愛シテツ3でした。

「SAPPORO 」獅鉄
「黄金風景」鯉八
「Where is HIROSIGE?」獅鉄
「新作トーク」鯉八獅鉄
「若草」鯉八