MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

祝・雛菊の陰で~きよ彦・雛菊の会~

学生落語からプロの世界に。結婚して子供を産み、幸せな家庭を築く・・・通り一遍の幸せを拒否して人々に笑いを届ける伝道師の道を選んだ二人に、縁あって学生時代から知り合いだった私がしてあげられることはこんなことしかないと、思い出の岐阜での会を企画しました。ただ普通の宣伝はするけれど、DMを集中的に出すとかはあまりせず。たとえお客様がツバナレ(10人未満)しなくとも、お祝いとして考えていました。

でもふたを開けてみたら、30人を超えるお客様がお祝いに。事前にきよ彦さんから「雛菊さんのお祝いだから、彼女をトリに」と打診は受けていたけれど、香盤はきよ彦さんのほうが上だから普通はきよ彦トリ。でも、けっこう何度も言ってきたことを考えると、きよ彦さんなりの思惑があるのかと思い、プログラムは香盤順にするけれど、あとは二人に任すという方法をとりました。

「オープニングトーク」きよ彦・雛菊
「出来心」雛菊
「追っかけ家族」きよ彦 ~中入り~
「保母さんの逆襲」きよ彦
「お見立て」雛菊

同じ学生落語出身とはいえ、年齢差が6歳あるのでこの二人に学生時代の接点は全くない。ただ入門は、きよ彦2016年9月、雛菊2017年4月だから半年しか違わない。
つまりきよ彦さんは社会人経験を経ての入門、雛菊さんは卒業後、直接の入門。
果たして、2席ずつの高座にそれが色濃く反映されていました。

雛菊のお祝いというムードに包まれた会であり、まず最初にトークで顔見せ。
そのあとに雛菊、きよ彦、中入りを挟みきよ彦、雛菊と進んでいくにつれ、私はなるほどと思いました。全体の会の構成を考え、新作落語と古典の融合が最大限に生きる順番はどれかということを、きよ彦さんはやる前から把握していた気がします。

常識的な香盤順での出演だったら、中入りをはさんで雛菊さんが二席続く。フラもあり、愛くるしい彼女ではあるけれど、お客様が温かい目で見て下さるということを差し引いても、まだ客席を手玉に取るほどの落語はできない。お客様が飽きてしまう可能性がある。逆に新作落語でトリをとるというのも、都会のど真ん中ではない岐阜の会となればかなりのリスクを伴う。

そう考えれば確かにこの順番がベスト、トリの雛菊さんのお見立ての多少のたどたどしさにも、運動会で一心不乱に走る子供に「がんばれ。がんばれ!もう少し!」と叫んで一緒に伴走する親のような一体感が確かに会場内にはありました。

最後の、キャリーケースを持っての「帰るよ!」の筋書きも、きよ彦さんならではのパフォーマンス、雛菊お祝いムードのお客様の前で、立派にタクトを振り終えた林家きよ彦さんの名指揮者ぶりが際立った会となりました。入門は半年しか違わないけれど、社会人の経験を持つきよ彦さんのプロデュース能力恐るべし、なのです。

これからも二人は応援していくけれど、どういう形にするか。今まで通りの二人会なのか、雛菊さんのキャラを最大限に生かす会は何か。きよ彦さんにも、先輩にぶつかっていく場を与えたいと思うし、だったらあの人か、この人か。

「もっと頭を使いましょう」

何気にきよ彦さんに教えられた気がする会となったのでありました。