「『松鯉先生、恋人がお待ちです』楽屋に入る時主催者の方がそういうんで、誰だろうなあと思ってちょっとときめいたら鯉昇師匠でした。この歳になってもそういわれると、少しはときめくんですね」私が洒落で言ったことを早速先生がネタにしてくれました。いつもは一緒にいらっしゃるのですが今回鯉昇師匠は前日の神戸からの名古屋入りだったので少し早めに入っており、大須の楽屋でご対面。相変わらずなごやかな雰囲気から始まったショーリショー。お客様も今回は二階までいっぱい。
いい会になることは、幕があく前から分かっていました。
「寄合酒」こと馬
「天保水滸伝~笹川の花会」松鯉
「千早振る~モンゴル編」鯉昇
「餅食い」鯉昇
「無筆の出世」松鯉
お客様のアンケートにいちばん多く書かれていたのが、「硬」と「軟」。
松鯉先生の講談2席はどこまでも力強く、これぞ本道というたたずまい。
かたや鯉昇師匠は、もはや原形をとどめないちはやふるの改作。
花魁と力士が3年後に出会う場所は日本から海を渡った大陸のモンゴル。
最後の「みずくぐるとは」がなかったことにされているのに、最上級のパロディーを楽しんでいる鯉昇師匠の落語。緊張と弛緩、とも言うのか、絶妙のバランスでなり立っているこの公演。お互いをリスペクトしているからこそのネタ選び。
私がずいぶん前から言っている「二人会の醍醐味」が凝縮されていた2時間。
硬派の80歳と 軟派の70歳。
合計150歳の名人たちは、確かに今回も大きな足跡を残してくださいました。