MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

「名人の定義」松喬・扇辰東西名人会 雑感~7/22 大須演芸場

一年に15回ほどは、大須で公演をさせて頂きます。立地、雰囲気、収容人数、どれをとってもこの会場が一番、名古屋で落語に似合っていると思っているから。
それぞれの公演に名称を付けますが、あまり「名人会」とつけることはありません。
名人かどうかはお客様それぞれが判断することだと思っているのと、万が一でも「どこが名人だ」と評されることがあってはならないと考えるからです。

ですが、今回はどうしても「名人会」とつけたかったのです。なぜかと言えば、東西の落語家さんで、「実力」がこれほどあるのにあまり知られていない、あるいは地味だと思われている最右翼の方へを紹介するフレーズとして「名人」以外の言葉が見当たらなかったからです。笑福亭松喬、この方こそ上方落語界を代表する「名人」であると私は思っていたから、あえてつけさせて頂いた「東西名人会」だったのです。

「狸の札」  辰ぢろ
「花色木綿」 松喬
三方一両損」扇辰  ~中入り~
「茄子娘」  扇辰
「三十石」  松喬

終わってみて、どれほどのお客さんが松喬師匠を「名人」だと思って下さったかはわかりません。もしかしたら「爆笑王」的に感じた方もいるかもしれません。
ですが、裏で聞いていて松喬師匠は間違いなく名人だと感じたことがありました。

ご存知の方も多いと思いますが、上方落語を代表する演目である「三十石」。
船旅を題材とするこの演目を得意とする噺家さんは上方ではたくさんいらっしゃいますが、ほとんどの方は落語の中に「舟歌」を歌う部分が出てくるので三味線などのハメモノがないと雰囲気が出ないということで敬遠なさる噺家さんが多いです。
そんな中で、それを承知で先代、先々代松鶴師匠譲りの本寸法を涼しい顔で演じて見せた松喬師匠、これだけで私はその凄さを感じたのですが、トリネタを開演前に聞いていた扇辰師匠が、御自分の中入り後の高座が終わるとお着換えの間は楽屋のスピーカーの音量を最大限にし、お着替えが済むとソデにお座りになって身じろぎもせずに松喬師匠の高座を見つめていたその事実、これこそが「名人は名人を知る」その何よりの証明だと思いました。

松喬師匠は知る人ぞ知るプロ野球オリックス」ファン。それも昭和の阪急ブレーブス時代から。その大好きな野球に例えるならば、今日の高座に限って言えば扇辰師匠があらゆる球種が平均点を上回るサブマリン山田久志で、松喬師匠はガソリンタンクと言われた無尽蔵のスタミナで350勝を挙げた米田哲也。若い人には全くわからないとは思いますが(笑い)
とにかく間違いないことは、二人とも「名人」の名に恥じない高座をお勤め頂いた、その現実。そして、帰り際に扇辰師匠がぽろっとこぼした一言。

「今日は久々に刺激をもらいました。ありがとうね」

次回は令和4年、6月26日です。

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松喬