MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

「また来年も」そうおっしゃって下さった人間国宝

今年最後の主催公演が終わった。
「ショーリショー2」78歳と67歳、大ベテランの二人会。
高齢者の師匠二人の会ということで、開催に特段の注意を払った二時間、終わってみれば、昭和の芸人魂をそこかしこに匂わせた、令和2年で確実にトップ3に入る公演だったと思う。

「子ほめ」 美馬
「餃子問答」鯉昇
赤穂義士伝~小山田庄左衛門」松鯉
水戸黄門記~雁風呂由来」松鯉
「芝浜」 鯉昇

お客様、一階は満員。100%を許していただいている大須演芸場のありがたさ。
二階は感染を気にする方のために自由席にしてフラットにしてあったのだけれど、移動する人はまばら。みな、食い入るようにして高座を見つめていた。
落語には大きな声で笑い、講談には一言も聞き漏らしてなるものか、とでも言いたくなるほどの緊張感、そして満足感。
「小山田はね、悪人なんですよ、悪い奴が主人公の義士伝なんだ。珍しいでしょ。」
終演後におっしゃった言葉を待つこともなく、庄左衛門とその息子に裏切られた父の悲しい物語を、松鯉先生は見事なまでに表現して下さり、その世界に浸ったままのお客様が最後に、「芝浜」でほっこりする。そのバランスがとにかく絶妙な、素晴らしい構成であった。

「あのね、談志師匠に言われたの。酒が好きで好きでたまらない魚勝が、急に改心するなんてそんなのおかしいと思わないのかって言われてね、目からうろこで、それから改心したんじゃなくて、飲み食いで借金できたのを返すために働き始めたら仕事が面白くなっちゃった、って設定にしたの。だから、魚勝は改心なんかしてないの」(笑い)

鯉昇師匠の芝浜を後ろの扉を開けて聞いていたスタッフが「なんて軽くて粋な芝浜なんでしょう!」と感激していた理由はまさに、改心なんかしていない魚勝のおかげだったのだと思う。

「あとね、ぼてふりがたかだか3年で表通りに店なんか出せるわけないの。だから僕は、表通りを変えて、新道(横丁の、私道)でやったの」

落語だって講談だって、少しずつその時代に合わせて、変化させて進化させていくものだ、長老の二人が口をそろえてそうおっしゃったのを聞いて、この二人の言葉が、客席の皆様に違和感なく溶け込んでゆく理由が分かったような気がした。

「来年もぜひ、続けていってほしいです」別れ際、松鯉師匠がはっきりとそうおっしゃって下さった、自分もやっていて楽しかった、ありがとう、とも。
もちろんお二人が健康でい続ける限り、ショーリショーは続けます。お任せ下さい。

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