MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

円楽師匠とのこと(4・最終回)

そして6年後は先週の日曜、高山市民文化会館。月日の経つのはなんと早いことだろう、と感じながら、肌寒い高山駅の改札にお出迎え。師匠は私の姿を見るなり、「おお~、元気か~」と笑って下さった。もう情報で私が長野を出て岐阜で生活をしていることはご存知の師匠だったが、真っ先に田舎の話題を。「〇〇ちゃん、死んじゃったんだよ」〇〇ちゃんとは、先にお話をしたゲートボールの企画を師匠に持ち掛けた旧知の旅館の旦那さん。「はい、存じてます」「そっか、突然容体が急変してな、あっという間だった。俺、お盆に行ってきたんだよ、お参りに」息子とは仲が悪くても、おやじさんは気さくに私に接して下さったので、訃報を聞いたときは驚いたものだ。
「おやじさんたちはどうしてる」
「そうか、まあ、歳だからな」
「ジョンがいなくなってからあの街も統率するやつがいなくなったよな」
私にしかわからない会話を繰り返すたび、私の頭の中は30年以上前にタイムスリップする。深く付き合ってきたわけではないけれど、私が落語に目覚め、この仕事をするきっかけになったのは師匠がいらしたからです。運命のいたずらで今はここにいるけれど、師匠のおかげで少しは呼び屋として東海地区では名も知られるようになりました。
そんなことを師匠に言いたくて言いたくて仕方なかったけど、今日は仕事。仕事以外のことで私情を持ち込んではいけないのだ。そう思いながら、「おい!親不孝者」と呼び止められることをちょっとだけ期待して師匠の控室の前を通る私がいた。

あっという間に公演が終わり、最後に駅で交わした言葉も、他愛もない一言だけ。
「じゃあな、またな」「お疲れさまでした」「・・・・おう」
師匠、あっけなすぎですよ、もっと昔話したかったですよ。だからあれだけ、控室の前を行ったり来たりしたじゃないですか・・・師匠の後姿を追いながら、そんなことを考えていた令和2年11月15日、高山市民文化会館・三遊亭円楽爆笑寄席。
トリの師匠の演目・・・「いたりきたり」。

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