MUGEプランニングのたまさかブログ

東海・中部地区で落語公演を開催しているオフィスのブログ

きく麿・鯉八とザ・ファンクス~7.17雑感

今から40年前、昭和プロレスを代表する兄弟レスラーと言えばドリーファンクジュニアとテリーファンクのザ・ファンクスが最も有名でした。どちらも当時の最高峰のNWA世界王者で、日本にも何度も来日していました。しかし兄弟でありながらそのファイトスタイルは両極端で、兄のドリーは沈着冷静、弟のテリーは激情家。同じプロレスラーなのにこうまで違うのかと思ったものです。昨日、大須演芸場で開催したきく麿・鯉八の二人には、この兄弟とそっくりな匂いを感じてしまいました。

同じ落語家で同じ九州出身、同じ新作派で顔もそっくり、でも出来上がった新作の方向性はあきらかに違うのです。兄?のきく麿師匠はお年寄りにもわかりやすい、ある意味「ベタ」な要素を数多く含んだ新作をおつくりになりますが、弟?の鯉八師匠は落語の常識にない、ファンタジー的要素を多分に含んだある意味ジャンルへの挑戦的な要素が強い新作。

私は顔の似ているこの二人の新作共演はスイングするもの、と考えていましたがそうではない、と二回の公演を終えてはっきり気づきました。

新作の会だから新作が好きな人が集まる、それはその通りなのですが、鯉八師匠がいらっしゃるからと来ていただいたファンは、きく麿師匠の落語には反応していなかった。
逆に古典落語も聞いているファンには、きく麿師匠の落語は許容されるけど鯉八師匠の落語はそもそも理解できない感じ。昨年は、きく麿ワールドが演芸場の空気を支配していたけれど、今年は逆で、鯉八師匠の笑いが優勢だったと感じています。

具体的にどこがどう、という説明はつけられません。
ですがそでで聞いていて、その傾向は感じていました。

「中島みゆちね」 獅鉃
「若さしか 取り柄がないくせに」鯉八
「歯ンデレラ」きく麿 ~中入り
「スナックヒヤシンス」きく麿
「寝るまで踊らせて」鯉八

プロレスのタッグチームなら、弟のやんちゃをたしなめながら兄が最後を締める展開、というのがあってのいいのかもしれないけれど、落語は個人の世界。次回についてはこの形を少し見直しての開催を考えなければ、そんな宿題を昨日は出された感じ。

落語って本当に奥が深い。そして、お客さんの反応もひとりひとり違う。
それを受け止めながら、名古屋で、岐阜でいちばんの、「外れない公演主催者」を目指していこうと考えた、7.17でした。

 

誰もやらずば、俺がやる。~玉川太福通し口演(青龍刀権次)~

玉川太福「青龍刀権次」6席通し口演が終わった。
初日が「発端」「召し捕り」「爆裂お玉」の3席、
二日目「血染めのハンカチ」「美人殺しの真相」「大団円~権次の改心」の3席、
二日併せて3時間を超える熱演。何より客席からの万雷の拍手が、今回のような企画を心待ちにしていたという事実を物語っていました。

そもそも講談の続き詠みや浪曲の通し口演は、会場を二日間借りなければならないことや、お客さまにも土日とも体をあけて頂くこと、さらに滞在費などの関係から実現に向けてのハードルが高く、それに見合う観客動員があるかという現実的な問題を考えれば地方での開催は難しいと言われていました。

ですが、東海地方の落語、講談、浪曲など演芸ファンは「東京でやっている企画を名古屋で見たい」欲求が非常に強いことでも知られているので、その希望にお答えしたいと考えていましたが、そのもっとも重要な条件である「会場」の問題をクリアして下さったのが今回いちばんお世話になった「まぐろや」さんでした。

「うちでよかったら何とかするよ、ウチが入っている卸売センターの会議室が使えると思うよ」そんなお声がけを頂いて、実現に向けてこの1年突き進んできました。
初めてでできるかどうかわからない。できても損をするかもしれない、お客さんもいらっしゃるかどうかわからない。そんなわからないだらけの会を、「やっちゃおう」と思って突き進んでしまうのは私の昔からの性質。まず「やる」と決めて、そのために何をしていくのか、というのがポリシー。はい、これはアントニオ猪木イズム。(笑い)

幸いなことに太福さんも賛同して下さり、出し物も講談で伯山先生がかけたこともある「青龍刀権次」に決まり、情報解禁してみたものの最初はそんなにチケットは動きませんでした。ですが6.7に伯山、太福がそろった名古屋の会にチラシを挟ませて頂いてから、あきらかに潮目は変わりました。

「お客様の熱気が凄くてびっくりしました」
二日間を終えての夕食の時、真っ先に太福さんが漏らした言葉。この言葉に、お仕事だけれど、儲けを出さなければいけないのだけど、それよりも大事なのは「やりがい」。
まだだれも手を付けずにいたところを切り開いていく快感を今回ものすごく味わわせて頂きました。・・・太福さん、鈴さん、そして何と言っても「まぐろや」さん、
ありがとうございました!

 

仮面を脱ぎ捨てた、鯉朝を見よ!~名古屋・瀧川鯉朝独演会

BSよしもとで、40年以上前の花王名人劇場を放送している。
談志師匠が蝶ネクタイで司会、小朝、しん平、駒平の若手が立ち漫談をしていたり。
文枝文珍、文福、小枝、ほか桂小文枝一門が勢ぞろいしていたり。

その中で、座布団の上で奇声をあげたり、のたうち回ったり、思わぬ視点から切り込んできたり、全く予想不可能な落語を展開しているメガネの落語家がいた。

三遊亭円丈。関東の新作落語のルーツを探れば、ほとんどの場合円丈に行き当たる。
円丈師匠に影響を受けた落語家には、多かれ少なかれ陰の部分、裏の部分、黒い部分がある。

いつもニコニコ、自分のことを「ゆるゆるの師匠」「尊敬されない師匠」と自虐する鯉朝師匠にも、その部分は間違いなく存在する。師匠がその部分をあえて見せなかっただけ。

でも、瀧川鯉朝のその陰の部分は、たまらなく魅力に満ち溢れています。

10月2日、日曜日、14時。その黒の部分を最大限にさらした会を、30人限定の小屋、名古屋市那古野、円頓寺レピリエで行なうことが決まりました。

真っ黒のネタは、ふたつネタだし。
「抜け雀」じゃなくて、「ぬきすずめ」。
「動物園」じゃなくて、「動物圓」。

来てみてわかるその中身。
円頓寺レピリエが、地下の秘密結社と化す日です。

令和4年 10月2日(日)14:00
名古屋市那古野 円頓寺レピリエ(場所はチラシ参照)
「くろ鯉朝~瀧川鯉朝独演会」
全席自由 (定員30名) ¥3000
チケット専用 09041533562
       mugeplan29@au.com

 

安定の菊之丞。オースのジョーも12回。

毎回毎回、安定の高座を見せて下さっている菊之丞師匠。
今回のオースのジョーは、9月25日です。めおと楽団ジキジキさんをゲストにお迎えしての開催となります、ただ今、今回のネタだしを師匠とご相談中ですが、決定しましたらすぐにこのブログにてお伝えいたします。

一般販売は<7/2土>から、いつものように朝10:00~20:00は専用ダイヤル。
専用メールは24時間いつでも受け付けております。安定の菊之丞、よろしくお願い致します。

令和4年 9月25日(日)14:00 名古屋・大須演芸場
「オースのジョー12」~古今亭菊之丞独演会
出演 古今亭菊之丞(2席) めおと楽団ジキジキ ほか
木戸銭 1階 ¥3500  2階 ¥3000 (前売・当日共)
チケット専用 09041533562  mugeplan29@au.com



松喬師匠の凄さを、名古屋のファンが認めた日~松喬扇辰二人会

昨年に引き続きの、松喬扇辰二人会。事前のチケットは伸び悩んでいました。
同日に、西文化で市馬独演会がかぶっていて、名古屋のファンが割れるのは覚悟。
でもどうしても江戸に比べて観客動員が芳しくない上方落語をそれを承知で名古屋のファンに提供しようと心に決めた企画「東西落語交流企画」だから、結果を急がず、徐々に浸透させていけばいいと思っての第2弾。ところが前日くらいから、問い合わせが多くなってきました。

当日券が20枚。一階席ほぼ満席。嬉しいなあ。そうなれば演者のほうも気合が入ることは必定。東西の名人の会は、扇辰師匠絶賛の、松喬・喬路の師弟コンビの生太鼓で幕開きしました。

「道具屋」喬路  「阿武松」扇辰 「お文さん」松喬 中入り
てれすこ」松喬 「五人廻し」扇辰

松喬師匠のお弟子さんの喬路くんの道具屋のあと、扇辰師匠の阿武松。たっぷりのまくらから、情景が浮かんでくる相撲の描写。「ちょっとオーバーしちゃったかな?」とすまなそうに引き上げてくる扇辰師匠。それを受けて、噺の時代背景をきちんと説明しながらの「お文さん」。懇切丁寧でありながら、ところどころに笑いの山をこさえてゆく抜群の構成力。松喬師匠のその語り口にお客様の上方落語に対するハードルがみるみる下がっていくのをそでで確実に感じました。

こうなってくると、あとは大丈夫。中入り後の「てれすこ」では、時間が押していることも踏まえてのまさかの「続きは次回」の下げ、そのあと扇辰師匠が小さな体をめいっぱいに使う五人廻しでお開き。私が日頃から話す「二人会は、1+1が2じゃなくて5にも10にもなる可能性がある」ことを証明したとても素晴らしい会になりました。

「扇辰師匠目当てできたら、松喬師匠にはまってしまいました」
アンケートにはこんな声がいくつも。そう、この日は笑福亭松喬という、今私が上方落語界で最も技術の高いと感じている噺家が、名古屋のファンに認知された記念日だったと言っていいと思います。

昭和51年の猪木vsアリ戦は、極東の島国のひとりのプロレスラーに過ぎなかったアントニオ猪木が、アリと戦ったことで世界に認知された記念すべき日。
あれから46年。令和4年6月26日もまた、笑福亭松喬が扇辰ファンにも、また名古屋の落語ファンにも「凄腕」を認知された、記念すべき日になりました。

昭和51年 6月26日の猪木vsアリは、

 

「愛して2!」夢丸・獅鉄の会

名古屋の落語家がほぼ小福師匠一人だったころ、大須演芸場は老朽化して閑古鳥がないてました。獅篭さん幸福さんが来ても飛躍的に観客動員は伸びず、名古屋雷門も演芸場もなくなってしまうのか、そんな瀬戸際に、今の演芸場存続に立ち上がった方々。そのご尽力のかいあって、名古屋の落語家も少しずつ活気を取り戻してきました。そして次の世代が少しずつ、育ってきています。その中でこれからをしょって立つと誰しも認めるであろう若手が登龍亭獅鉃さん。

一方の三笑亭夢丸師匠。昔、高視聴率で一世を風靡した「ルックルックこんにちは」のレポーターとしてご存知の方も多い先代の夢丸師匠が生前から、「夢丸」の名を彼に継がせることを決めていたという素質の持ち主。MUGEプランニングの公演でも5/1に名古屋の独演会でその実力をいかんなく発揮し、芸協に夢丸ありを知らしめた若手の逸材です。

基本、獅鉄くんが夢丸師匠に挑む構図ではありますが、名古屋のお客様に思う存分夢丸ワールドを披露する場でもあります。お互い2席ずつのたっぷりバージョン。
どうぞお越し下さいますよう。

◎メール mugeplan29@au.com(24時間対応)
◎☎ 09041533562 (10:00~20:00)

令和4年 9月18日(日)14:00
「愛して2!~シテツを全線開通させる会」
1階 ¥3000  2階 ¥2500(前売・当日共)
出演 三笑亭夢丸(2席) 登龍亭獅鉃(2席)
09041533562  mugeplan29@au.com

 

「はしごしました」~由瓶・兼好二人会が終わって思うこと

東海地方に移住してきた今から15年ぐらい前は、一部の笑点メンバーなど大御所の会以外は、落語会の数はそんなに多くありませんでした。老舗のプロモーターが三三師匠を売り出そうとして会をなさっていたことがとても新鮮に思えたほどでした。

あれからすぐ、落語ブームの流れで名古屋周辺にはものすごい数で会が増え、現在でも各自治体などが市内のホールを使って我も我もと公演を行なっています。

落語会の主催者は、基本的に横の連絡網を持っていません。というか、ほとんど合同で公演を開催することもなく、それぞれの都合でのみ会が企画されます。そんなわけもあり由瓶、兼好が行なわれた6/19は、日進市志の輔独演会、金山で喬太郎・白酒二人会がバッティングする落語ファンにとっては頭の痛い一日となったようです。

そんな背景もあって、この日の公演にお客様がどのくらい来ていただけるのかは寸前まで気をもみました。まして、江戸落語の兼好師匠は名古屋でもおなじみですが由瓶さんは上方の、そんなに名古屋にはいらっしゃってない方。この日から始まった「東西落語交流~EAST&WEST」企画のスタートがどのくらいお客様に浸透しているかも心配の一つでした。

ただこれだけは、どこにも負けていないと自負しているのが「組み合わせによる相乗効果」です。組み合わせでお客様に喜んでいただくには。1+1が2ではだめなのです。5にも、10にも笑いが増幅していってこそ、うちのような弱小プロダクションが存在する意味がある、それを、大須演芸場をほぼホームに活動し始めてからずっと言い続けてきました。口幅ったい言い方ではありますが、「お客様の意識をあげていく」「お客様を育てて、私たちも成長していく」そんなことに力を注いできた10年。そして、この日。

「110」

前回の二人会よりも40%増しのお客様が!由瓶さんが高座でおっしゃっていたように、この状況下でこれだけのお客様が詰めかけた。そのことがどれだけ意味のあることか。すっと継続してきたことが実になっているんだなあ、そう感じられた一日。
でも、そのあと、もうひとつの出来事が起こりました。

「だらだらフリートーク」由瓶・兼好
「延陽伯」源太 「鰻屋」兼好 「次の御用日」~中入り
阿弥陀池」由瓶 「風呂敷」兼好

中入りが終わり、後半の部が始まる直前に、一人の女性が足早に入ってきました。
その時は気づかなかったのですが、その夜ツイッターでたまたまその方と思しきツイートを発見して、とても驚きました。

そこには喬太郎・白酒二人会と由瓶・兼好二人会の、両方の感想が書かれていたのです。

「はしご、したのですか?」・・・「はしごしました」

きけば、両方のチケットを買っていて、喬太郎師匠のトリネタを諦めてこちらへ来たと。中入りの時間もいつになるかわからないのに、わざわざ移動してきて下さった方。

トークが長引いたので中入り後2席に間に合ってよかったです」
安くない両方のチケットを持ち、こちらをあきらめず走ってきて下さったお客様、
「また、次も頑張れるね」

帰りの車の中で、かみさんが私にそう言ってくれました。

・・・・つぎも、がんばろう。

6.26日曜、松喬・扇辰二人会。

・・・・西文化で同じ時間に市馬独演会です。

「はしごして、くんねえかなあ。」(笑い)